謝罪ではなく、欧州連合に必要なのは説得力

ギリギリなので縮小日記。「反欧州連合の勝利」を見ないフリをする人たち。謝るべき理由が間違っている。


反極右 仏全土デモ/高校生がよびかけ 「歴史逆行させない」 - ライブドアニュース
うん、まぁ『戦う民主主義』の正義の伝統を持つあちららしいお話ではありますよね。日本でもそのような考え方を持つ人は居なくはないのでしょうけども、そういう人は同じ口で「言論弾圧だ!」とか言い出すこともしばしばなので、少なくとも現在の日本にはまだそんな本気の覚悟は根付いていないのだろうなぁと。

 パリのデモ出発地となったバスティーユ広場には「歴史に逆行するな」「欧州のみんな、(極右の台頭を許して)ごめんなさい」などと書かれたプラカードが林立。広場を埋め尽くす若者からは「私たちの街に極右はいらない。極右のための居場所はない」との唱和が起こりました。

反極右 仏全土デモ/高校生がよびかけ 「歴史逆行させない」 - ライブドアニュース

ともあれ、正直『極右』というレッテルを貼って彼らの影響力を否定しようとするのはやっぱり悪手だよなぁと。
結局のところFNがここまで地道に(サルコジさん時代に少し抑えられたものの)票を伸ばしたのは彼らの基本路線が「反エリート政治」であり、更にずっと「欧州連合(欧州官僚)はオレたちをないがしろにしている」ということを主張してきたことの帰結でもあるわけですよね。不満の受け皿と言うのは確かにその通りで、そして彼らは見事に適切な時流に乗った不満の受け皿を提供することに成功している。
だからそもそも「欧州のみんな、(極右の台頭を許して)ごめんなさい」なんて、謝るところはそこじゃないんですよ。むしろ謝るべきなのは「欧州のみんな、(欧州連合の意義を説明できなくて)ごめんなさい」という言うべきじゃないのかと。
やるべきなのは「何故欧州連合が必要なのか」という点を説得することこそが重要なんですよ。今更それを説明するのではなく、統合への熱狂の消えた「今」だからこそ。
まぁ学生にそれをやれと言うのも酷なお話かもしれませんけど。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40797
むしろ見るべきは『極右』そのものじゃないんですよ。もしかしたら本当に彼らの「目的」はそんな悪意を持っているかもしれない。しかし、それでも、彼らの用いる「手段」――欧州連合への懐疑やそんな少数意見を黙殺する政府への不満――についてはは限りなく正しいと言うしかない。

 ポピュリストの票はまだ弱すぎ、一貫性を欠くために、しっかり対応するに値しないという議論は通用しない。今回の選挙では、反エスタブリッシュメント政党がフランスと英国――EU第2位と第3位の経済大国――で第1党になった。少数派政党はスペイン、イタリア、そしてドイツでさえ、大きく勢力を伸ばした。
 また、ポピュリストたちは互いを嫌悪し、奇妙な案や矛盾した案を掲げているが、共通のテーマを1つ共有している。すなわち、EU国民国家を犠牲にして強くなりすぎたという強い確信だ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/40797

――そんな風に古き良き国民国家を犠牲にして、(欧州市民である)俺たちは何を手に入れたのか?
――失われるものと、得るもののバランスは適切なのか?
求む「ヨーロッパ市民を説得する次の『大きな物語』」 - maukitiの日記
この辺は先日書いたお話そのものでもあります。


そんな今だからこそ生まれた根本的な疑問に関する答えをきちんと出さない限り、いくら謝罪しても無駄だよなぁと。