イラクにトドメを刺しつつあるオバマさん

地域不安定化の典型的パターン。


[FT]イラクで過激派伸長、国家分裂の危機(社説)  :日本経済新聞
過激派掌握のイラク・モスルから約50万人脱出 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
イラク過激派、首都進撃を計画 米監視団体 写真7枚 国際ニュース:AFPBB News
ということでイラクもまぁロクでもないことになりつつあるそうで。元々はイラク国内でせいぜいテロ行為をするしかなかった彼らが、しかしシリア内戦を通じてより強力になって帰ってきた。イラク政府そのものの弱体化と、そうした兵士たちの成長と言うダブルパンチ。
かくしてあのシリアでの凄惨な内戦によって文字通り「鍛えられた」兵士たちによって、元々弱体であったイラク軍は鎧袖一触されてしまった。まず武器が内戦地に流入し、そして次はその内戦で鍛えられた兵士たちが武器とセットで流出する。まぁ地域の不安定化の典型的パターンといえばその通りであります。

イスラムスンニ派の過激派「イラク・レバントのイスラム国(Islamic State of Iraq and the Levant、ISIL)」が率いる武装勢力によるモスル制圧は、シーア派主導のイラク政府に大打撃を与えている。武装勢力は10日、ニナワ(Nineveh)州の州都であるモスルとその周辺地域、さらにキルクーク(Kirkuk)州やサラハディン(Salaheddin)州の一部も掌握した。

 モスルでは自家用車などに乗り込んで脱出しようとする多数の住民が、市外の検問所に押し寄せている。スイス・ジュネーブに本部があるIOMは現地からの情報として、イスラム武装勢力の攻撃によりモスルは完全制圧され、「同市内外の50万人を超える人々が避難を余儀なくされている」と発表した。

過激派掌握のイラク・モスルから約50万人脱出 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News

ただまぁISISさんちの戦略として見ればこうしてイラクを目指すことってむしろ理に適ってもいるんですよね。だってシリアで戦いを決意しているアサドさんを相手にするよりは、ずっとイラクの方が勝ちやすいだろうから。
そもそも『アルカイダ系』とされる彼らの目的って、(腐敗・堕落した)政府を打倒して自身の価値観そのものを体現する政府を打ち立てる、ことにあるわけで。そしてその連鎖によってイスラム世界を復活させるのだ、なんて。なのでそれを始めるのは別にどこの国だっていいんですよ。もちろん理想を言えば、初めから弱体である政府の方が武力闘争で勝ちやすいからそっちの方が好都合でしょう。
――で、彼らは混沌状態だったシリアで足場を確保し、そして元々の主戦場であったイラクに帰ってきた。
イラク、クルド部隊が北部主要都市掌握―無政府状態が深刻化 - WSJ
クルドさんちまでこんな状況であることを考えると、もう国境引き直すしかないかもしれませんね。


しかしまぁもちろん始めたのはブッシュさんではありますが、シリアを放置し、イラクにも手を差し伸べないオバマさんは現状のイラクについて、少なくとも半分くらいは責任があるんじゃないかと。
イラク緊迫、「全ての選択肢を検討」と米大統領 無人機攻撃など 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
どう見てもやる気があるようには見えませんよね。重要なのはほんとうにアメリカにやる気があるかどうかではなく、周囲がアメリカのやる気についてどう考え見ているか、という点であります。そしてオバマさんの前歴を見る限り、それはありそうにない、と最早見られてしまっている。


ブッシュさんはフセインイラクをぶっこわし、オバマさんはポストフセインイラクをぶっこわしつつある。まぁいい勝負ではあるのかもしれない。