旧イスラム帝国の中心あたりでカリフを叫ぶ

むかしアラブの偉いお坊さんの復活。


イラクで勢力拡大の過激派、イスラム国家の樹立を宣言| Reuters
ということでまさか本気でやるとは思っていなかった建国宣言&カリフ宣言であります。いやぁ不謹慎なお話ですが、歴史がどんどん動いて面白い時代だなぁと思わずにはいられません。

ベイルート 29日 ロイター] - イラクとシリアで勢力を拡大しているイスラムスンニ派の過激組織が29日、「カリフ(預言者ムハンマドの後継者)」を指導者とするイスラム国家を樹立すると一方的に宣言。世界中のイスラム教徒に忠誠を呼びかけた。

この組織は、国際組織アルカイダから派生し、「第2のビンラディン」とも称されるバグダディ容疑者が率いている。「イラクとレバントのイスラム国(ISIL)」または「イラクとシリアのイスラム国(ISIS)」という名前で呼ばれてきたが、バグダディ容疑者を「カリフ」とするイスラム国家樹立の宣言とともに、組織の名称も単なる「イスラム国」に改めた。

イラクで勢力拡大の過激派、イスラム国家の樹立を宣言| Reuters

カリフの復活。まぁそれって所謂『イスラム原理主義』な人たちの悲願でもあるんですよね。つまりイスラムにおける急進派・過激派とされる人たちが望むのは一般に「上からの改革」であるとされているわけです。現状のイスラムの苦境は、ミクロな個々人ではなく、マクロな国家政府と国際関係こそが伝統的イスラム世界を破壊したのだ、と。故に軍事力でもってその国内政治体制と対外関係をあるべき姿に「修正」しようとする。
実際のところ歴史を見ても『カリフ』それ自体にはまぁあんまり意味はないとされているんですよね。カリフが居るからイスラムの一体性が保障されていたわけではなく、むしろイスラムに一体性があることから結果的にカリフの存在を証明していたのだと。
現代では途絶えたはずの正当な(厳格なイスラム法によって治められる)イスラム共同体国家の建国宣言として、彼らはそれを宣言した。
「我々は世界唯一のイスラム軍でありイスラム国家体制であり、故にカリフを持つ」と。


少なくとも短期的には、今回の宣言で決定的になったのはそんなイスラム世界内部における分裂の方なのかなぁと。単にスンニとシーアというだけでなく、そんなイスラム国家の復活を恐れるサウジやエジプトなど世俗的独裁権力者たち、そして大多数の中道派たちとISISのような過激派たち。いやぁイスラム世界はまさに大分裂時代であります。単純に対欧米との戦いでもなく、あるいは民族主義的な戦いでもない。
手段はともかく基本的には目的は同じであるはずの両者、過激派と中道派、果たして一体どちらがイスラム復興の主導権を握るのか?
ちなみにこの構図において心配されるのは、まさにシリア及びウクライナの現状がかなりそうであるように、第三者=国際社会がそこに介入する気がないと、両者による殲滅戦が展開されてしまうんですよね。仲介者が登場しない以上、両者が疲れ果てて停戦するか、あるいは敵を殺しつくすしかない。第二次大戦辺りまでは当たり前にあった光景を今見せられているのは、なんだか生暖かい気持ちになりますけど。



その意味では、まぁ第三者である私たちにとってはしばらく安全な世界がやってくるのかもしれませんね。結局それは彼らが遠く離れた地で身内で殺しあってるだけだから。構図としては第一次大戦を眺めている感じに近いのかなぁと。一国平和主義万歳。石油だけ頭の痛い問題ですけど。
確かに子ブッシュさんはその地に「自由」をもたらし、オバマさんは米軍を「撤退」することに成功した。
ブッシュとオバマに感謝だな!