グレートウォーがもたらしたもう一つの影響

偉大なヨーロッパを守る為に特定人種は排除しちゃおう。



http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41464
先日書いた『第一次大戦』がもたらした影響の、国際連盟のような普遍的価値観とは逆の、もう一つの反作用について。白色人種至上主義。それが最も強く出たのがアメリカでもあったんだよね、と言うお話。そこから産児制限優生学・人種差別というナチスがモデルとした社会へと突っ走るアメリカ。




そもそも第一次大戦というのは、HGウェルズの『世界史概観』に代表されるような、全世界的な普遍的価値観を生み出す契機となったわけですけども、それって端的に言って身も蓋もなくヨーロッパの没落こそが、そうした機運を生み出したわけですよね。最早そんな傲慢なやり方はやめようと。
しかし同時にそんな「没落」とコインの裏表にあったのが、喪失への危機感であり、反発心でもあった。
その後の展開はともかくとして少なくとも当時の人びとにとって、あの大戦争の荒廃と言うのは文字通り『ヨーロッパ文明』の終焉にも見えてしまったわけです。故に多くの人びと――文学者やそうでない人たちも含めて、ヨーロッパ文明は歴史上にあったような消え去る文明となってしまうのではないか、と真剣に心配されたのです。第一次大戦がもたらした喪失感。
――となると、次に生まれるのは、防衛本能である。
「偉大なる文明を守ろう」「偉大なヨーロッパ人種を守ろう」
ここに戦前からあった『優生学』が強力に結びつくことになるわけです。第一次大戦によるヨーロッパ荒廃は世界平和の希求というだけでなく、もう一つの反作用として白色人種至上主義という鬼子も同時に生み出した。ザ・貧すれば鈍する。


元から南北戦争以来あった「黒人対白人」という構図に加え、20世紀初頭には大量の中国人移民などの社会問題に悩まされたアメリカは、そうした『人種防衛』政策に真っ先に転んでいくことになります。黄禍論=イエローペリルを念頭にした1924年の『排日移民法』のように日本人移民も例外なく、同じく1920年代に多くの州で制定された『異人種間結婚禁止法*1』は、白人女性とアジア人男性をターゲットにしていたものでした。社会に劣等な子供を増やしてはならない、なんて。
アメリカは白人の、白人による、白人のための社会である。第一次大戦によって荒廃したヨーロッパを見たことで、更に危機感を抱くようになった彼らはそのイデオロギーを守る為に「より」積極的に行動するようになった。それは単純に保守的なイデオロギーというだけでなく、可哀想な(劣等な)子供を減らそう、というリベラル(笑)な動機からの要請でもあったことが一定以上の規模を持ってしまったことの要因でもあるんですけど。

 白人の米国人の心をつかもうと黒人の兵士たちは戦場で名を上げた、とダレッサンドロ氏は言う。フランス軍の指揮下に入った第369歩兵連隊「ハーレム・ヘルファイターズ」は非常に勇敢に戦ったため、全隊員に戦功十字章という勲章がフランスから授けられた。またこの連隊の音楽隊――音楽家の黒人士官ジェームズ・リース・ヨーロッパがリーダーだった――は、フランスにジャズを紹介することにも貢献した。

 ところが当時の米軍当局者は、アフリカ系米国人の部隊が「思い上がっている」と考えるようになり、釘を刺しておきたいと思うようになった。そのため、ダレッサンドロ氏によれば、白人の米国人兵士が黒人の同胞をフランスのレストランから追い出すという「本当にとんでもないこと」にもなったという。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41464

第一次大戦後のアメリカってこうしたお話に言及しないわけにはいかないんですよね。もちろんこうした人種政策は戦前からあったことは確かではありますけども、しかしそんな白人至上主義なイデオロギーに一層拍車を掛けたのがあの大戦争でもあったのは否定できないお話ではあると思います。そりゃあんまり回顧したくないよねぇ、そんな人種主義はまさに現代まで地続きなのだから。



ちなみにこうしたアメリカが、あのナチスドイツの『優生学』のモデルになったのは有名すぎるお話であります。特定人種は排除しちゃおう、のプロトタイプ。
アメリカってすげーな。

*1:ちなみにこれは最終的に1967年まで存続する。