ISISの「All You Need Is Kill」

アルカイダすら匙を投げる、ということの本質。


ローマ法王:強制措置を容認 イラク侵攻のイスラム国に - 毎日新聞
そういえば大勢に直接影響があるわけではないものの、面白国際ニュースとして法王が条件付きとはいえ対ISIS戦争を条件付きとはいえ「正しい戦争」としていたそうで。

 また、イラク北部での「イスラム国」によるキリスト教徒迫害の深刻化を受け、韓国訪問から帰国した後に自らイラクを訪れる案を側近らと検討していたと明かした。だが、「現時点では(イラク訪問は)最良の措置ではないかもしれないが、行く用意はある」と述べた。

 法王はバチカンローマ法王庁)のフィローニ福音宣教省長官をイラク担当特使に任命してイラク北部に派遣。潘基文(バン・キムン)国連事務総長宛ての書簡で「人道上の惨劇」に終止符を打つよう国際社会の行動を促している。

ローマ法王:強制措置を容認 イラク侵攻のイスラム国に - 毎日新聞

うーん、まぁ確かに彼らのあまりにもあんまりなはっちゃけっぷりを見ると解らなくはないお話かなぁと。単純に法王だけでなく、むしろイスラム世界の多くからも反発されまくっている彼ら。
――とても分かりやすいザ・世界の敵へ。
CNN.co.jp : イスラム国は「がん」 オバマ米大統領が空爆継続を宣言
そんな風に無駄に敵を無駄に増やしまくってもやっても戦略上の利益なんてあるはずないのにね。元々シリアではアメリカですら見逃していてくれたのに、見事に主敵へとレベルアップしてしまった。でもそんな常識論、ひたすら信仰に殉じようとする彼らには通用しない。その行動は理屈じゃない。


ISISの台頭以来しばしば「アルカイダすら扱いかねた」と評される彼らの本質って、単純に首切りや異教徒全ぶっ殺しといった残虐性というだけじゃないんですよね。むしろ何故彼らが「身内からも恐れられる」存在なのかと言えば、まさにシリアで見せた反政府軍分裂や上記ニュースのように、それはもうひたすら相手を選ばず敵を増やしまくってしまうことにあるわけで。
そもそも――少なくともビンラディンさんが居た時代までの――アルカイダって、こうした点こそ気に掛けていたわけです。主敵はあくまでアメリカであって、幾つかのテロ攻撃こそあったものの基本的にはヨーロッパに対してのメッセージと言えば「アメリカに味方すべきではない」という趣旨でほとんど一貫していた。それは正しく「脅し」であり、例えば私たち日本に対するメッセージなんかも同じ要因だったんですよ。「アメリカに味方するならテロするぞ」は正しく「我々はアメリカこそが主敵でそれ以外は無視したい」という間接的な意味でしかなかった。
世界でバラバラだったイスラム過激派の運動を一つにまとめたように、正しく戦略的だった彼らは、無駄に敵を増やさないことで(内部分裂を防ぐのと同時に)国際社会から包囲網を敷かれないことを至上命題にしていた。敵を増やせば戦力は分散されてしまうし、アメリカと同調する形での大きな国際世論を作ってしまえば包囲網ができてしまう。『9・11』はともかくとして、以降の彼らのやり方はそういうやり方を貫いていて、そしてそんなアメリカ孤立化戦略はイラク戦争の顛末などを見るように(ほとんど米国の自業自得ながら)欧米離間という意味でそれなりに成功していたのです。


ところがISISの台頭を見ると、まぁご覧の有様ですよ。
世界中全方位にケンカを売るわ、勝手にカリフを名乗ってイスラム世界内部(スンニ対シーアというだけでない)で大混乱だわでロクでもないことにしかなっていないの明らかでしょう。まぁこの辺はビンラディンさんという一つの過激派の象徴をぶっ殺したことで、その後の過激派内部の勢力図をグダグダにすることで有象無象生み出したオバマさんの勝利ということはできるかもしれませんけど。
「イスラム国はどのテロ組織より大きな脅威」、米国防トップ 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News
その意味では、アメリカにとっては実はアルカイダよりも与しやすい相手ではないのかなぁと思ったりします。それこそ不定形なテロ組織を相手にするよりも、国家宣言した勢力を相手にする方が経験豊富だろうし。


殺すことこそすべて。
そりゃアルカイダすら匙を投げてしまいますわ。