まだ登り始めたばかりのアメリカのイスラム移民坂

でもまぁあの『9・11』あったことを考えると、現状は成功していると言うことはできるかもしれないよね。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41678
しばしば嘲笑される(目に見える)アメリカの差別と、ヨーロッパの(目に見えない)差別を比較したら、どう見ても後者の方が根が深くてタチが悪いというのはよく指摘されるお話ではありますよね。またうちの日記でもデメリットの面をよく語る米国的『政治的正しさ』信奉のメリットとしても、こうした状況を生み出す一助ともなっているでしょうし。


あとはまぁ単純にイスラム教徒内だけでなく、アメリカではそれこそ伝統的な黒人・ヒスパニック・アジア系・イスラムとそれはもう各種勢力が入り乱れまくっているので相対的な『規模』から問題視されないという面もあるかもしれない。ぶっちゃけ上記二つに比べたら勢力としてそこまで突出しているわけではないというのは大きいだろうなぁと。それとまったく真逆――「イスラム教徒に国が乗っ取られる」というのが真面目にネタにされるのがヨーロッパでもあるわけだし。社会の中における唯一解りやすい少数派=デラシネではないからこその、安心感。それが皮肉な形で緊張緩和をもたらしているよなぁと。身も蓋もなく言ってしまえば、(政治的・経済的)苦境にあるのは彼ら「だけ」ではないことが。
ヨーロッパのイスラム移民社会研究の第一人者であるオリビエ・ロワ先生なんかが仰るように、何故ヨーロッパで暮らす彼らが過激な原理主義に走ってしまうのかと言えば、それはもう「現在」住む国の政治や地域社会から疎外されていると感じている故に、であるからなわけです。
正しく『多文化主義』であるからこそ生まれる深い溝 - maukitiの日記
この辺はヨーロッパで主流だった見て見ぬフリを続ける「相互無視」という多文化主義こそが、要因の一つであることはやっぱり間違いないでしょう。

 さらに米国人イスラム教徒は、1つの宗派や民族が圧倒的な多数派を占めることもない。ピュー・リサーチ・センターが前回2011年に集計を試みた時は、米国のイスラム教徒が世界77カ国からやって来ていることが判明した。対照的に西欧諸国の多くでは、1つか2つのグループが多数派を占めている。フランスではアルジェリア人、オランダではモロッコ人とトルコ人といった具合だ。

 このことは重要な意味を持っている。というのも、米国では様々なグループがごちゃまぜ状態になっているため、イスラム教徒の移民とその子孫がグループごとに別々に暮らすことが難しくなっているからだ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41678

そんなヨーロッパの現状と比較すると、アメリカのこうした現状はやっぱり『疎外感』を生みにくい社会となっていて、それが一つの成功要因だというのはその通りなのだろうなぁと。


ただまぁあまり楽観できないお話として、まさにヨーロッパがそうであったように、いつだってより大きな問題となるのが二世代目、三世代目の移民の子供たちであるわけで。おそらくアメリカがその世代交代に直面していくのはこれからが本番でしょう。そこで親世代にあった地元(宗教)社会からも孤立してしまうと、彼らは益々疎外感を鬱屈させていくことになる。
イスラム過激派の「Hello, world!」 - maukitiの日記
ちなみに、だからこそ、そんな孤立した現代社会に住む若者こそをリクルートする過激派の『ネット勧誘』というのは、悪魔的に相性がいい故にあちらでは本気で懸念されているんですよね。


がんばれアメリカ。