お互いに「藪をつついて蛇を出す」人たち

でもその両者にあるパワーバランスを考えると、なんとなく『ハゲワシと少女』を見る気分。


動画:香港民主派デモ、繁華街でも座り込み 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで大盛り上がりの香港さんちであります。まぁここまで大騒動になるとは正直思っていなかったなぁと。アラブの春なんかとは微妙に構図が違うのは「これまであった」民主主義が奪われようとしている所で「若者たち」がそれを座視するか否か、という点。よく移民問題で語られる移民世代ではない二世代三世代から生まれる不満というのがありますけども、それとほとんど同じ構図――当事者世代は傍観しつつも若者たちこそが不満の声を上げる――になりつつあるのはとっても興味深いお話であります。香港側の若者世代は本土側価値観に徐々に取り込まれていくのかと思ったら、むしろ全く逆だったっていうね。ぶっちゃけそういうことをやるだけの元気――というか勇気があったんだなぁと。
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41853
さて置き、そんなアンブレラ革命について、FTさんが愉快なことを仰っているんですよね。

 もちろん、香港は中国の主権が及ぶ地域の一部だがウクライナは独立国だという違いはある。しかし、香港の抗議行動に暴力的な結末がもたらされれば、ロシアによるクリミア併合がロシアと西側の普段の関係を破壊した時とほぼ同様な確実さで、中国と西側諸国との関係も崩れることになるだろう。

 中国政府は今、次の一手を考えているところだ。香港のために、中国のために、世界経済のために、そして国際政治の安定のために、正しい対応を取ることが極めて重要だ。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/41853

まぁ相変わらずワザとなのか、あるいは根本的にズレているのか解りませんが、これって真逆のお話ですよね。つまり、彼らはウクライナ危機後のロシア制裁を見て大人しくしようと考えるかというと全く逆で、あれを念頭にした場合むしろより強く鎮圧する方に向かう以外にないと思うんですよねぇ。
しかしロシアを止めることさえあれだけ苦労したのに、中国への圧力=制裁が上手くいくわけないよね。ということはつまり以下略。


ともあれ、まぁ多分に結果論ではありますが、一方で今回の件でよく解らないのが中国政府側の対応なんですよね。少なくともこれまでの香港においては「これ以上の」民主主義を求めるというよりは、あまりにも失われるモノが大きいからこそこうして抵抗運動となってきたわけで。もうちょっとゆっくり進めれば良かったんですよ。まさにこれまでそうだったように、彼らはそんな本土側の権威主義と香港側の民主主義の間にある、曖昧なグレーゾーンで満足してきたのに。
――それがあんなあまりにもあんまりな杜撰な押しつけをするものだから、ご覧の有様ですよ。
この辺はアラブの春ウクライナ危機を受けての『危機感』こそがそうさせてしまったのかなぁと。ただでさえ香港内部における経済問題(既存住民と新興の本土からの富裕住民との摩擦)が表面化しつつある中で、ああならないように出来るだけ事前に抑制しようと思ったら、火に油を注いだ中国政府。こちらはこちらで「藪をつついて蛇を出した」感がものすごい。
この期に及んでしまうと、本土にも影響を与えかねない『前例』を作りたくない中国政府としてはもうデモ自体を違法行為として切断処理する以外にない。で、その処置が穏健的なモノとなるのか、あるいは劇的なモノとなるのかが今後の焦点なのでしょう。
その結末をwktkしながら見守る海外の私たちというのも正直かなりアレではありますけど。その意味では、まぁ当事者である香港若者たちは概ね純粋な思いからの騒動ではあるのだろうしまた個人的にも応援したいところではあるものの、一方で端から見ていてどうしても『ハゲワシと少女』な残虐な絵を恐れつつも想起してしまうお話だよなぁと思ってしまいます。


もし中国政府側から落としどころを考えるとしたら、選挙制度はそのままに常任委員会の権限縮小辺りをこっそり進めてしまえば問題ないかもしれないので、血が流れない解決策としてはその方向がいいんじゃないかな。
まぁ香港の民主主義は短期的にはやっぱり死ぬことになるんですけど。


みなさんはいかがお考えでしょうか?