前政権から続くコストに苦しむ米国大統領たち

それにおんぶにだっこな私たち。



CNN.co.jp : 米軍のISIS空爆費用に約1090億円、年間では4倍か
そういえばシリアイラク空爆の戦費が早々に10億ドルに達したそうで。日本円だと約1090億円とかまじパない。まぁ別に直接いきなり支払う性質のモノではないとはいえ、やっぱり膨大な出費ですよね。

戦力予算評価センターは、イラクなどでの作戦が拡大せず現在の規模の空爆や後方支援任務が続いたとしても戦費は月間2億ドルから3億2000万ドルかかると試算。年間では最大40億ドルの計算となる。
国防総省報道官は9月下旬、イラクやシリアでの軍事作戦は現在の規模で今後数年間続くとの見通しを示していた。

CNN.co.jp : 米軍のISIS空爆費用に約1090億円、年間では4倍か

ともあれ、オバマさんが言うようにこれは長期的な作戦となる見込みが高い以上、最終的に何十兆円規模となったイラクほどにはならないとしても、やっぱりこうした『戦費』が積み上がっていくことになる。現代世界において「戦争で儲ける」とか、極々一部の例外はいるでしょうけども、まぁ夢物語というか幻想ですよね。
その負担にアメリカがどこまで耐えられるか、ということを考えるとまぁ興味深いお話ではあります。先日の日記でも書いたように、財政的な意味でもまた兵士の血という意味でも、そしてつまり政治的な世論という意味でアメリカはその長期戦に耐えられるのか?


まさに子ブッシュ政権も、フセイン時代のイラク制裁――飛行禁止区域維持や経済制裁――のコスト負担を重く感じていた点こそ、あのバカげたイラク戦争へと至った一つの理由でもあったわけで。当時のアメリカ主導によるイラク北部での飛行禁止区域維持の為のコストは、単純に財政的な点だけではなく、むしろサウジアラビア駐留が長引くことで政治的コストも積み上がっていて、その挙句が「イスラム教聖地に駐留するアメリカ軍に鉄槌を」とするビンラディンさんの登場に繋がるわけですよ。同時にまた長引く核抑止を目的としたイラク経済制裁が半ば無力化されつつあった点、フランスやロシアはフセインと裏取引をしていたし、経済制裁によってイラク国民数十万人が犠牲=虐殺に等しいという国際社会からの批判もあったりした。
ちなみにフクヤマ先生なんかは、結果論ながらこちらの理由の方を(第二次)イラク戦争開戦事由にすべきだった、と仰っているんですよね。
そうした長期的なコストを一挙に解決できる手段としてあのイラク戦争が選択されたのが開戦の少なくとも『一因』であるし、オバマさんの性急な撤退戦略も同じくアメリカのコスト負担を解決しようとしたのも同じく『一因』としてあるでしょう。もっと言えばクリントンさんだって父ブッシュのユーゴスラビア政策の遺産を引き継いでもいたわけで。
こうした状況を改めて見ると、日本でもしばしば言われるような「外交政策の一貫性のなさ」というのも無理もないお話なんですよね。だってそもそも米国大統領の中の人がころころ変わっているんだから、むしろそうならないはずがない。


その意味で言えば、子ブッシュさんもオバマさんのどちらもも同じようなコスト負担の重さに直面していて、それでいて真逆の――でも一周してやや近いところにもある――究極的解決を選択した、という見方はできるのではないかと思います。子ブッシュさんは全てを自身の手で終わらせようと、オバマさんは全てを終わらせる為に全てから背を向けた。彼らはどちらもほとんど自身の責任に依らない前政権から続く(準)戦費=コストをどうにか解決しようとした結果が、まぁ二人ともご覧の有様なことを考えると、どちらも少しだけ擁護できるし、ちょっと愉快なお話ではありますけど。


さて、おそらく次にやってくる政権も前政権であるオバマさんの遺産であるこのイラク・シリア空爆の戦費に直面することになるでしょう。それは確実に、今のオバマさんよりもずっと重い負担となっているのは間違いない。そしてまた「そのコストをどうにかすべきだ」という世論にも直面することになる。
そんな次の米国大統領は、一体どういう選択をするのでしょうね?