「海の向こう」から放置してきた不平等の悪影響がやってくる

エボラだのイスラム国だの難民だの。


世界の所得格差が拡大、1820年代の水準にまで悪化 OECD 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで21世紀以降特に私たちが懸念してやまない「国内」のそれだけでない、海の向こうとの「国家間」の不平等であります。まぁ昨今では再び広がり始めたことで、日本含む世界――というよりは先進国のどこでも問題になりつつある国内不平等のお話ではありますが、それでも尚100~200年前と比較した上で悪化したかというとやっぱりそうではなく、少なくとも公共事業や社会保障制度の発達は最低限の不平等解消に寄与してきた。そうした成果が「価値観や精神として失われつつある」というのが、現在の国内不平等議論の根幹にあるのでしょう。

 過去2世紀の世界の生活状態を調べた報告書の中でOECDは、所得の不均衡が急速に拡大したのはグローバル化が進み始めた1980年代以降だと指摘している。

 調査では25か国の1820年以降の所得水準を調べ、世界が一つの国であるとみなしてデータを突き合せて比較したところ、世界の所得格差は東欧各国における共産主義の台頭などに代表される20世紀半ばの「平等主義革命」によって急速に縮小した後、拡大に転じ、2000年までに1820年と同じ水準にまで広がったことが分かったという。

世界の所得格差が拡大、1820年代の水準にまで悪化 OECD 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

ところがぎっちょん「国家間の不平等」という点で見れば20世紀の間もほとんども拡大を続け、豊かな国と貧しい国、にある格差はそれは直線的にもう広がりまくっているのでした。そこにあるのはかつてあったモノが失われつつあるとかそういう次元ですらない。ただひたすらに悪化を続け、現在に至っているだけ。


豊かな国は基本的に豊かになっているものの現在その再分配に失敗しつつあり、一方の貧しい国はただただずっと貧しいまま。


もちろん前者と後者どちらの問題がより重要なのかと問われると、特別に自己中心的な考えというわけでもなく、国内のそれを優先するのは別に間違った話ではないでしょう。海の向こうの国がどれだけ貧しかろうが、今の自分の社会の中にある不平等こそが問題だ、というのは概ね正しい。
――ただ、やっぱりそんな南北問題=世界における不平等が私たちと無縁でいられるかというと、やっぱりそんなことないんですよね。
海の向こうから不平等のツケがやってくる。
広義で見ればあのイスラム国の台頭もその一つであるでしょう。現地にある不平等が原因となって政府打倒へ走らせる。ところがやっぱり根本にある貧しさは何も変わらないので、中東でもマグレブでも効果的な統治に失敗してはああした過激な勢力の決定的な台頭、あるいは無政府状態を招くことになる。結果としてヨーロッパなんかはそれはもう地中海を越えてやってくる難民問題に頭を抱えているわけで。『アラブの春』でああして煽りまくってた辺り、かなり自業自得ではあるんですけど。ついでにアメリカでも中南米の政情不安からくる難民に限りなく近い移民増大がここ数年来大きな問題となって、故にオバマさんが苦戦する移民制度改革の議論に繋がっているのでした。
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そしてもっと直接の不平等の結果、というよりも原因そのものな構図なのが『エボラ出血熱』の感染拡大のそれですよね。しばしばニュースでも現地の感染拡大抑止の方策が杜撰なことで先進国の私たちから半ば悲劇半ば喜劇として見られることになっていますけども、あの彼らの失態はほとんどそのまま「貧しさ」と直結しているわけで。先進国に住む私たちにとって当然すべき対応策を現地の彼らができていないのは、身も蓋もなくインフラも金もないという以上の理由なんてない。
その失態を現地にある風習や迷信のせいだと笑うのは――もちろんそうした要素がまったくないとは言いませんけども――本質的な問題から目を背けていることでしかないよなぁと生暖かい気持ちにはなってしまいますよね。まぁこれまで世界にある国家間の不平等に目を背け続けてきた私たちらしい態度といえば、まさにそのものでもあるんですけど。


世界の国家間にある致命的な断絶=不平等の帰結として、テロリズムや病気や難民は国境を越えて先進国に住む私たちの所まで押し寄せてくる。いやぁ国家間の不平等っておそろしいですよね。でも私たちにとって直近の問題は国内格差問題なので、それは極々当たり前の優先順位として放置され続けてきたし、きっとこれからもそうでしょう。
だから、まぁこうして場当たり的に支援するのも、仕方ないよね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?