「Don't be evil」のevilが意味するモノってなぁに?

を改めて考えてしまうお話。


「忘れられる権利」の問題提起 日本のグーグル裁判 - WSJ
http://wirelesswire.jp/privacy_and_personal_data/201410231100.html
そういえば『忘れられる権利』について、私たち日本にも徐々にその流れは押し寄せているそうで。

 アジア周辺の国々がどのようにこの問題への取り組みを始めているのかを示す最新の動きがあった。日本人男性は21日、インターネット検索大手の米グーグルに制裁金の支払いを求める申し立てを東京地方裁判所に行った。この男性は、同社が裁判所から削除を命じられたにもかかわらず、男性に言及する特定のインターネット検索結果を削除していないと主張した。

 削除命令は東京地裁の関述之裁判官が10月9日に出した。男性は、グーグルの検索結果が自分の評判を傷つけ、人格権を侵害していると主張していたが、同裁判官は、投稿の一部を検索結果から削除するようグーグルに命令した。関裁判官は投稿の信ぴょう性には言及しなかった。この命令は下級裁判所が出した仮処分であり、最終的な判決ではない。それは欧州連合EU)の最高裁に相当する欧州司法裁判所が5月に出して注目を集めた判決と軌を一にしている。EU最高裁は、個人には個人に関連する特定の検索結果が表示されないよう検索エンジン運営会社に要請する権利があることを認定した。いわゆる「忘れられる権利」だ。

「忘れられる権利」の問題提起 日本のグーグル裁判 - WSJ

まぁこのお話は現代社会における『自由』を巡る議論でも典型的なコンフリクトな構図で、まぁ愉快な気持ちになるお話ですよね。
一方のヨーロッパでは個人情報を含む検索結果に制限=リストの不可視化を加えることこそが社会正義でありそのプライバシー保護の要請を無視するのは悪魔的所業であると主張し、ところがもう一方のアメリカではそんなことをすること自体が『自由』を侵害する検閲に繋がりかねない悪魔的所業であると考えている。
一体どちらが正しいのかといわれると、それなりにヘビーユーザーな私でも白か黒かで回答できないお話であります。まぁたいていの人はそうなんじゃないでしょうか。
幸いにして未だ私の個人情報は漏れてない可能性が高いでしょうけども、そうした過去の恥部が永遠に検索結果に出力され続けるのはまぁ考えただけで恐怖でもあるし、一方でそれこそ検閲に関わる重大な措置を(良くも悪くも営利目的である)企業に一任していいのか、という懸念は当然のモノでしょう。


所変われば文化が変わる、正義が変わる、そしてつまり『悪魔』の定義も変わる。
――ならばアメリカやヨーロッパ(あるいは日本など)それぞれの地域に合わせて柔軟に対応すればいいのか、と言われるとまぁその通りなのかもしれません。


ところが、地域性による柔軟なやり方を容認しようとする際に思い出すのは、中国国内で行われているネット検閲である『金盾』だって名目上はそうした理由から行われているわけですよね。欧米では違うかもしれないが、中国ではそのようにするのが社会正義であり、公共秩序を乱しかねない情報を流布するのは悪魔の所業であると真面目に考えている。
「民主主義」「天安門」「64運動」「香港デモ」「法輪功」「アラブの春」「言論の自由」「ウイグル騒乱」等々、中国国民はそれを知らないほうが幸福である、なんて。
こうしたことを考えると、しばしば――うちの日記も含む――進歩的で人権派な人たちから批判的言説で語られる、グーグルやヤフーやマイクロソフトやアップルなどの欧米IT企業が行う「中国政府への検閲協力」も完全にevilの定義に含まれるのか少し自信がなくなってしまうよなぁと。最低限守らねばならない基準が維持されているからこそ欧米の『検閲』あるいは『自由』はセーフであり、しかし中国のそれは問答無用でアウトである。そんな風に擁護することはできますけども、まぁそんな恣意的なやり方が中国からすれば納得できるわけない。
それこそリベラルな私たちが謳う「基本的」人権、絶対であるはずの基準からは程遠い。


グーグルをはじめとする検索エンジンを提供する企業にとって一体何が悪魔の所業であり、何が社会正義にかなうのか。
その定義が曖昧であればあるほど、少なくとも中国などのネット検閲をする国に対する説得力はなくなってしまうのではないかなぁと。


「evilにならない」という社是は、それなりに素晴らしい目標ではあるのでしょう。でも問題はそのevilの定義だったっていうオチ。まぁこれって以前から指摘されているお話でもあるんですよね。
米グーグル会長、「Don’t be evil」は愚かなルールだと発言 | GGSOKU – ガジェット速報
かつてグーグル会長自身が言っていた「愚かなルール」というのは概ねその通りだよねぇと。


みなさんはいかがお考えでしょうか?