富めば鈍する

そのツケを払うことになりつつあるロシア。


石油値下がりでロシアが腐りかけソ連よりもヘロヘロになりそう - 今日の覚書、集めてみました
今更すぎるネタではありますけども、やっぱり石油価格が安くなりまくってるのは国際的な大ニュースの続く2014年でも特に予想外な斜め上――いや正確には「下」なんですけども――だったよねぇと。世界的な景気停滞による需要減予想やらシェールオイルによる供給過剰やら、もちろん一つ一つではここまで大きな流れにはならなかったのでしょうけども、それが積み上がっていったら見事にご覧の有様に。本邦でもガソリン値下げ隊の出番が無くて良かったね。
石油値下がりでロシアが腐りかけソ連よりもヘロヘロになりそう - 今日の覚書、集めてみました
そして価格安は、当然の帰結として産油国たちを直撃する。そしてそれはあのロシアも例外ではないと。

Russia had a window of opportunity at the end of the Cold War to build a modern, diversified economy, with the enthusiastic help of the West, before the ageing crisis hit and the workforce began shrink by 1m a year. This chance has been squandered. Mr Putin's rash decision to pick a fight with the democratic world has made matters infinitely worse. Cheap oil could prove to be the death knout.

ロシアには冷戦の終わり、高齢化危機が本格化して労働力が毎年100万人ずつ減少する前に、現代的で多様な経済を西側からの熱心な支援を得て築くチャンスがありました。
このチャンスは無駄にされてしまいました。
民主的な世界と喧嘩するというプーチン大統領の拙速な決断によって、事態はどうしようもないほど悪化しました。
安い石油がとどめになるかもしれません。

原油価格「急落」の複雑なカラクリ | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

ウクライナ騒乱で、ヨーロッパやアメリカの手をあれほど焼いていたロシアが原油安で大ダメージを受けつつあるというのは、まぁやっぱり冷戦終焉の風景を思い出す構図ではありますよね。
極々常識的な話をすれば、ソビエト連邦が崩壊したのは経済が破たんしたのが第一要因であるし、アメリカが世界最強国家であるのは経済力がその基礎にあるからだし、中国の台頭が大きな変化を生んでいるのもやっぱりその経済力の成長にあるわけで。
――そしてプーチンさんの下でソ連解体中の危機状況からロシアが復活しつつあったのもやっぱり経済力の復活でもあった。でもそれって身も蓋もなく資源高騰ブームのおかげでもあったのでした。
それこそ2000年以降からの原油は超高騰時代で故に資源大国であるロシアの春でもあったのです。ところが、だからこそ、彼らはその時期に経済近代化を目指す構造改革を進めることができなかった。ロシア国内の改革派は日和見主義に敗北した。でも仕方ないよね、実際に原油安で苦境に陥らない限りその必要性を真に実感できなかったのだから。
オランダ病一直線。
もしかしたら今回の石油安を受けて再び改革の機運が高まるかもしれない。それでも、おそらくプーチン政権が続いていく間、多少資源価格が値下がった所でロシアの経済改革が真に再開されることはないのだろうなぁと。ぶっちゃけ元々彼らの危機感が最高潮にあったWTI原油価格が2000年までの20ドル前後*1にならないとダメそう。これはさすがにむりですわ。
本気でプーチンさんがロシア経済の改革を推し進めるつもりであれば、2004年の大統領選挙の後など、今よりもずっとタイミングのいい時期はあったはずなのです。しかし彼はそうしなかった。そしてついに原油など資源バブルに陰りが見え始めた現在、ご覧の有様ですよ。


さてロシアが勝手にコケるのはともかく、私たちが無視できない国際関係上の問題としては、このヘロヘロ状態のロシア――というよりもプーチン政権が如何にして乗り切るかという点でしょう。
原油安のおかげでロシアは再び「歴史が終わる」のか? 欧米リベラルな人たちがかつて夢見たような「国際秩序と一体化するロシア」の夢が再び見れるのか?
というと、まぁ昨日書いた中国さんちのように逆ベクトルにいく可能性の方が高いよねぇと。それこそ今回は冷戦時代のように一人きりではなく中国という同好の士も居るわけで。ついでにウクライナ騒乱の風景を見ると、民主的な改革派が盛り上がる余地はかなり少ないというしかありませんよね。おそらく国内政争としては、西側の手先として否定される可能性の方が高い。
それこそ冷戦時代から続く由緒あるロシア的解決法というのはまさに「外敵のせいにする」というモノでもあるわけで。国内の失敗から目を逸らし、ついでに民主主義の制限といった国内統制をも正当化する一石二鳥の手段。
多分今後のロシアもそういう方向に行ってしまうんじゃないかなぁと。


みなさんはいかがお考えでしょうか?