にゅー☆わーるど☆おーだー

核兵器を無くせばいいんじゃないかな。



http://m.jp.rbth.com/politics/2014/10/28/50853.html
ということで『アメリカ一極支配』に不満タラタラなプーチンさんのお言葉であります。まぁ本文ではポジショントークとしてウクライナやシリアの騒乱から「今になって」アメリカ支配の限界が見えたと仰っていますけども、ぶっちゃけそんなこと2001年以前から既に言われている見慣れたお話でもあるので特に目新しいモノでもなかったりしますよね。
それでも敢えて現状から論じようとすれば、現状のアメリカ一極支配に代わる国際秩序誕生の可能性としては概ね三点かなぁと。

以下その辺に関する思考実験的な適当なお話。





アメリカ大同盟の高すぎるハードル

しばしば主張される一般的な批判としてあるのが、現実主義な観点から「強力すぎるアメリカに対して各国が協力してバランスオブパワーに走るだろう」というものであります。それは旧ソ連圏を率いるロシアから、圧倒的な成長力を持つ中国、BRICs新興国、あるいは統合の進んだヨーロッパ、もしくは再び東アジアの盟主たらんとする日本まで「対アメリカ大同盟」の候補者たちはこれまで様々に言われてきたわけです。
『候補』だけは一杯あった。
――でもまぁ少なくともこれまでは、あの世界中から大批判を浴びたアメリカの失態である『イラク戦争』を経ても尚、そんな動きは表面化しなかったわけですよね。それどころか、むしろ広まったのはロシアや中国に対する包囲網の意欲っていうオチ。現在の国際関係を見る限り、アメリカ包囲網よりも先に、ロシア包囲網や中国包囲網の実現の可能性の方が――それ自体の可能性はともかくとして相対的に見れば――確実に高い。
その意味でいえば、おそらく、今回のロシア=プーチンさんの反アメリカを旗印にした「新世界秩序構築の提案」も上手くいかないでしょう。
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それは第一義的には、昨日日記で少し書いたように、現状のアメリカ一極支配の根幹にある国際機関によるアメリカ自身の『戦力的抑制』というソフトパワーな効果でもあります。パクスアメリカーナは参加者にも「それなりに」利益がある。おそらく世界で最も配当を得ているのが我らが日本でもあるでしょう。アメリカは日本の番犬様であります。
つまりマキャベリ大先生が言うような国際世界を恐怖で支配する独裁者という「だけ」では決してない。まぁならず者認定された国家たちからは同意されないでしょうけど、しかしそれでもアメリカという国は基本的には愛された支配者でもあるわけで。


そしてもっと本質的で地政学なお話として、アメリカって圧倒的な世界最強国であると同時に結局どこまでいっても地理的に孤立してるんですよね。ハートランドを中心としたユーラシアから見れば決定的に孤立しているアメリカ。この構図から生まれるのが、身近な脅威に対してアメリカのパワーを頼りにするというありふれた構図であります。国家が感じる脅威の度合いというのは単純にパワーの相対差だけではなく『距離の近さ』でもあるのだから。
かくしてロシアに対抗する為にアメリカの力を頼りにする、中国に対抗する為に遠く離れたアメリカと結ぶ、という私たち日本でも見慣れた風景が世界中で生まれるのです。
資源だけでなく地理的な意味でも、まじゴッドブレスなアメリカ大陸ですわ。


孤立主義

上記のような自然発生的なアメリカ一極支配の国際秩序のリコンストラクションよりも可能性が高い(かもしれないのが)アメリカ自身の手による店仕舞いでしょう。まぁこれは上記でも書いた地理条件故に生来的に持つアメリカの宿痾でもあります。世界のことなどすべて無視して引きこもってしまえばいいではないか、なんて。もしそれが実現するとすれば、NATO脱退か日米同盟の破棄のようなインパクトのある外交政策の大転換が起きた時かなぁ。
まぁこの辺は特に台頭する中国の海軍戦力という視点から、東シナ南シナ海を中心に専門の人たち少し前からよく議論されているお話でもありますが、でも個人的にはさすがにないかなぁと。
ヨーロッパにしろ東アジアにしろ、そうした重要地域でアメリカが「引く」ということはほとんどそのまま「世界から手を引く」のと同義でもあります。数十年どころか百年というオーダーで見れば決して否定できない可能性ではあるものの、それこそ第一次大戦前にあったイギリスを超えるドイツという構図のような、アメリカ軍事力を直接に越える国が生まれない限りは、そんなことしないんじゃないかと。
でも今回述べる三択の内どれが最も可能性が高いかといえばコレかもしれない。

戦争以外に術を知らない私たち

で、もう一つと言えば歴史的に最もよくあるやり方である、身も蓋もない大戦争の結果によってまれる可能性。軍事力が強い奴がルールを決める。

 「かつては、諸大国のゲームと行動のルールを定める新たな世界秩序というものは、大戦争の結果として構築された。戦勝国がヤルタ、ポツダムで話し合い、国境の不可侵、民族自決国際連合創設などの相互関係の新ルールを決めた」。アレクサンドル・コノバロフ戦略評価研究所所長はこう歴史を振り返る。
 ところが、コノバロフ氏によれば、新システムの必要性はかつてないほど高まっているのに、世界秩序を決定するような大戦争は起きていない。「冷戦は終わったが、平和条約が結ばれたわけではないし、相互関係の原則で合意をみたわけでもない。そういうルールを構築せねばならないのに、どうやったら新世界秩序が決められるのか誰も知らない」。こうコノバロフ氏は強調した。

http://m.jp.rbth.com/politics/2014/10/28/50853.html

言っている本人も論外気味に述べているように、仮に『新世界秩序』が生まれるとしてもやっぱりそれは大戦争、一心不乱の大戦争がなければ生まれないだろうというのは概ね正しい指摘ではあるのでしょう。しかしそれでは明らかに割に合わない。
ぶっちゃけこの問題って結局ここに行き着いてしまうんですよね。本邦でも『アメリカ支配』を憎む人は少なくありませんけども、ぶっちゃけそれ以外にどうやって――ちなみにアメリカの支配力が落ちて更に国際関係が無政府状態になるのを『新国際秩序』と言うのもアリといえばアリなのかもしれませんけど――新たな世界秩序が生まれるのか、誰にも解らない。
「戦争で勝つ」という身も蓋もない事実があるからこそ、勝者のルールを敗者に押し付けることができるわけで。ルールが適切かどうかは問題じゃないんですよ。万人が等しく納得できるルールなんて不可能な以上、そのような問答無用さが無ければ実現できるはずがない。それこそ第二次世界大戦のような決定的な勝敗の後ですら、ヤルタやポツダムで勝者の彼らは戦後国際秩序の構築に死ぬほど苦労したわけで。
そんな勝者と敗者のいない対等な関係で、ルールなんて決めれるはずがない。少なくとも私たち人類は過去2500年ずっとそうだった。


現状の国際体制が崩壊しない限りはそんな世界大戦が起きそうにない。でも、世界大戦が起きないと現状の国際秩序が崩壊することも短中期的にはありそうにない。
鶏が先が卵が先か。いやぁプーチンさんも困ってしまいますよね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?







「世界を変えたいなら核兵器を捨ててしまおう」

まぁこんなアキラメロンな結論じゃつまらないので、以下余談的な適当な個人的見解。
さて、冷戦の歴史からて少なくない学者たちが述べているように、現代で国家間戦争を減らした大きな抑止力としてあるのが『核兵器』だと僕も思います。それこそが現代世界で軍事力が強調されなくなった要員の大きな一つであると。あの強力すぎる核兵器なんかがあるからこそ、冷戦時代に本気で恐怖していた第三次世界大戦は起きなかった、というのは少なくとも一つの要因ではあるでしょう。
つまり、現状の核兵器管理体制こそが、今の国際秩序の最も根幹の一つだと言ってもいい。


ということで現状の国際秩序に不満を持つロシアや中国の皆さんは、まずそこから打破してみればいいんじゃないかな? 
おそらくそれが最も手っ取り早く劇的な効果をあげるでしょう。世界中の国が核兵器を捨てるか、あるいは世界中に核兵器をばら撒くとかすれば、おそらく、世界は一変すると思うよ。
ところがぎっちょん(おそらく解っていながら)ロシアや中国もそこまでしようとはまったく思っていない辺り彼ら自身もまた共通の利害関係者の一員であり、現状のアメリカ主導による国際秩序が実に良く出来ていることの証左でもあるんですよね。
核兵器管理を巡る問題で、アメリカ中国ロシアの意見が一致している限り安心できるっていう皮肉。




世界が平和でありますように。