時代変化に敏感だった(かもしれない)日本

国際関係の根本的変化を真っ先に受ける日本。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42534
ということで今年一年で特に変化した国際関係についてのお話。まぁ日本の安倍首相の個別評価の部分については――左右から不満がある人もいらっしゃるでしょうけども――ともかくとして、しかし基本的にはイデオロギー云々というよりも、まさに安倍さん(もっといえばその前の民主党政権時代から続く傾向でもある)の振る舞いが国際関係の変化を示す一例として語られているのは興味深い愉快なお話ではあるかなぁと。
この辺は、筆者の内心はともかくとして、概ね冷静で(文字通り)客観的な見方をしているのではないかと思います。

 剛腕な政治家の台頭を西側に対する明白な挑戦と見なすのは間違いだ。彼らの間には多くの論争がある。12月初めにプーチン氏がアンカラを訪問した際、エルドアン氏は満面の笑みを浮かべていたかもしれないが、トルコは今も、反抗的な加盟国だとはいえ北大西洋条約機構NATO)の一員だ。

 日本の軍事力を再構築するという安倍氏の野望は、中国を抑止するよう計算されている。ヒマラヤ山脈における中国との国境紛争で、モディ氏は米国との関係改善と安倍氏とのパートナーシップを模索することになった。

20世紀後半の多国間主義のモデルは歴史的な幕あい

 こうした指導者が実際に語るのは、20世紀後半の多国間主義のモデルは恐らく、国家間関係の性質の恒久的な変化ではなく、むしろ歴史的な幕あいを表している、ということだ。

 グローバル化はすでに後退している。剛腕な政治家が舞台を闊歩する中、カントがホッブズに道を譲り、多国間主義が大国政治に道を譲っている。西側諸国はこれから、今よりずっと荒っぽい世界に生きることがどういうことかを再び学ぼうとしている。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/42534

日本国内の「ウケイカ」として語られる傾向は単に政治家個人や国内政治の帰結というだけではなくて、むしろ世界における国際変化の潮流変化の表れ――多国間主義が終わり再び伝統的な地政学の世界がやってきつつあること、を意味している、と。ちなみにこの次なる世界秩序について考えるには、引き続き絶対に核兵器と抑止問題を避けては通れないわけですけども長くなるので割愛。


ともあれ因果関係という点で見れば、やっぱり安倍さんが現在の東アジアに見られる国際関係を生み出したのではなくて、むしろまず東アジアに見られる国際関係があってそれを受けて(日本の有権者の多数派意見によって)安倍政権が誕生したという方が割合としては大きいのだと思います。ついでに言えば、それはお隣の韓国さんちで見られる「反日」や「親中」といった感情も、単純に内的要因だけでなく外的要因が同様に大きいのは無視するべきではありませんよね。圧倒的なパワーを持つ中国台頭による影響を受けないわけがない隣にある日韓。
その意味で、少なくとも安全保障の面では、一部野党の人なんかが言うような安倍政権を変えたからといって現在の――中国台頭を中心とする――東アジア国際関係の変化がまさか無かったことになるわけでは絶対にないし、むしろそれを言うのは、それこそ引用先に出てくる『国家主義者』のように日本の影響力を過大視し過ぎだよねぇと生暖かい気持ちになるお話ではあります。


ここで皮肉で面白いのは、ところがそうした「軍事力と同盟力が国際関係の通貨となる時代」な世界でも尚アメリカの適応力はむしろより発揮されるだろうという点であります。元々多国間枠組みに冷淡だったアメリカは、おそらくヨーロッパよりもずっと楽に、リベラルな西側秩序がなくても生きていける。


今は国際秩序の歴史的な幕間が終わりつつあり、故にその影響を真っ先に被る日本こそが安倍首相のような政治家を生み出すことになった。というのはまぁ反論も多そうですが、中々説得力があって面白い見方だなぁと思います。
みなさんはいかがお考えでしょうか?