ジェームズ・カーヴィルが看破した民主主義制度におけるすばらしき普遍的真理の再証明

「It's the economy, stupid」



極左とネオナチを選んだギリシャの窮状 | ビジネス | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
ギリシャの急進左派の勝利が証明するいつものパターンについて。

 SYRIZAは、同じく反緊縮の右派政党「独立ギリシャ人」(13議席)と連立を組む。「独立ギリシャ人」は反ユダヤ姿勢を批判されている党だが、EUやIMF国際通貨基金)からの金融支援と引き換えに求められている緊縮財政に強く反対し、支持を伸ばした。

 第3党に食い込んだのが、極右政党「黄金の夜明け」。ネオナチ政党とも言われる彼らは、党首を含む幹部が殺人で逮捕・起訴されている。BBCによれば、黄金の夜明けの主張は「反緊縮」ではなく「反体制」だ。といっても、両者の根本は同じ。ギリシャの人々は怒っており、自分たちを守ってくれなかった主流派の政治家たちに背を向けたのだ。

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今回の件で重要なのは、何も彼らが反移民やら反EU的な言説を「メインに据えて」勝利したわけではないという点でしょう。その勝利の秘訣は結局のところジェームズ・カーヴィルが言ったように「要するに経済なのだバカもの」でしかないわけですよ。
経済的苦境に立たされた有権者たちが他のどの政治家たちにも期待できなくなったからこそ、それを(少なくとも相対基準において)真摯に訴えたように見える彼らが勝利したというだけ。もちろんそれ以外の政策を支持する人たちが居ることも事実でしょうが、しかしそれは決して第一義的な要因ではない。何も有権者が極端にウケイカ・サケイカしたから、そのような扇動政治家たちが勝利するわけではないのです。他に選択肢がないと考えられてしまったからこそ、彼らは勝利しただけ。


ぶっちゃけてしまえば、すくなくとも不況下における選挙公約は経済政策以外の個別政策なんてほぼオマケでしかないんですよ。
【賛否両論】TBSが安倍政権をヒトラーに例えて大炎上!サンデーモーニングがヒトラーと群集心理の危険性を指摘!自民党支持者らが発狂中!|情報速報ドットコム
この因果関係をうっかり見誤ると、以前書いたような愉快なお話が出てきてしまうわけで。あのヒトラーの成功を金字塔にして、確かに扇動政治家たちが経済政策を利用して権力を奪取したのは間違いない歴史的事実であります。しかしそれは当時の有権者が独裁権力を支持する故に勝利したわけでは絶対にない。ただただ優先順位の問題であり、その先頭にある経済的苦境を救ってくれるかもしれない手段や希望を提供してくれた、というだけ。
扇動家「も」経済救済を片手にやってくるのであって、「経済救済を片手にやってくるのが扇動家である」というわけでは絶対にない。


現代日本でもこのパターンは変わらないと思うんですよね。結局安倍さんの自民党が圧倒的支配力を持っているのは、その経済政策に期待されているだけであってそれ以外の外交や内政面でのイデオロギーの方向性なんて二の次でしかない。まさに第一次安倍政権の時はその勘違いによって彼も大失敗したわけで。
なのに今でも安倍政権批判としてその政治面の保守性や右派っぷりを主張している野党の人たちがいらっしゃいますけども、あれってどう見ても本気で勝つ気がないよなぁと生暖かい気持ちになってしまいます。不況下にあって重要なのはそこじゃないんですよ。仮に今のアベノミクスがまるで効果がなく、ほんとうにのっぴきならない経済問題で今も苦しんでいる人たちにとって、優先順位としてはそんなことどうでもいいわけで。
――経済的に本気で追いつめられた彼らが望むのはただ自分たちの生活の質を改善してくれるかどうか、という一点だけ。その意味で言えばそこさえあれば他は悪魔であろうが関係ないし、他が天使だろうが関係ないのです。
ワイマールから今のギリシャに至るまで、民主主義制度におけるすばらしき普遍的真理。
いやまぁもしかしたら現代日本の経済状況はアベノミクスのおかげでまったく悲観的ではなく、だからこそ直近の経済問題ではなく「生活に余裕のある人向け」に訴えるために現政権のウケイカを批判しているのかもしれませんけど。弱者救済を訴える共産や社民の人たちが本来「より」注力すべきなのはこちらであり、まさにそうすることが党勢回復に繋がるだろうに。最近も某共産党議員の人が話題ですけども、何故か『金持ちの道楽』に限りなく近い近隣外交や政治的イデオロギーにばかりかまけているのを見るとまぁとっても愉快な気持ちになってしまいます。そのくせアベノミクスも一緒に批判するっていう。


今回のギリシャが「また」「再び」証明したように、経済さえ解決してくれるならば悪魔とも契約しよう、というのは現代民主主義制度において概ね真理である。素晴らしき私たちの民主主義制度。
経済=景気と雇用は現代民主主義において投票先を決める最重要の要因なのです。それは政治的扇動家が生まれる余地を無くすためにも、理性ある政治家であればそれを無視することは許されない。いやまぁ本邦を振り返るとどう見ても無視しまくっている政党大多数で頭を抱えてしまうんですけど。
かくして比較的マシな経済政策を唱えた人びとこそが選挙に勝つ。


みなさんはいかがお考えでしょうか?