存在の耐えられない軽さとなったウクライナ

ウクライナはヨーロッパ政争の具ではない。国である。


コラム:ウクライナ情勢、「第2次大戦」前夜との共通点| コラム| Reuters
ということで尚も炎上を続けながらも、当初の盛り上がりはどこへやらひたすら放置プレイされるウクライナ情勢であります。

ダボス会議で同大統領は、ロシアがウクライナ東部に兵士9000人以上と戦車数百台を派遣していると非難。国土の7%が事実上ロシアに占領されているとし、「これが侵略でないなら、何が侵略なのか」と訴えた。

ウクライナ東部で続く戦闘について同大統領は、フランスの風刺週刊紙「シャルリエブド」への攻撃にもなぞらえた。その話をあえて持ち出したのは、世界が「ウクライナ疲れ」に陥らないようにしたかったからだという。

世界は「ウクライナ疲れ」に陥ってはいない。なぜなら、そもそも大きな努力を払っていないからだ。

コラム:ウクライナ情勢、「第2次大戦」前夜との共通点| コラム| Reuters

かくして世界から見捨てられつつあるウクライナ以前の日記から書いてきましたど、ウクライナ大統領自身が言うようにどう見ても他国に『侵略』され『占領』されていますよね。上記日記でも触れたように、今の状況にあの時の東西で半分こされたポーランドとの類似性を見てしまうのもやっぱり解るお話かなぁと。周辺国の構図そのものというよりも、その扱いの「軽さ」という意味で。
ウクライナのことなんてどうでもいい。
それこそ我らが日本なども特に軍事力を忌避し平和主義を自称する人びとは一杯いるはずにもかかわらず、こうしたロシアのほとんど軍事侵攻といっていいやり方に対して大きな批判はなかったし、ほぼ当事者である欧州連合ですら(物理的な意味で止めるのではなく)せいぜいが経済制裁お茶を濁すだけ。


でもまぁそれも仕方ないよね。私たち日本人が愛するのはこれまでもずっと「自国の平和」だけだったし、更にヨーロッパさんちにおかれましてはホントもうそれどころじゃないわけで。
欧州の真ん中を走る危険な亀裂 経済恐慌と不安定な政治、1930年代の再来はあるか?:JBpress(日本ビジネスプレス)
彼らにとってすでに最重要・最優先の危機ではなく、いやむしろ二番目に重要ですらない。もしかしたら政治的リソースが余っていればこんなことにはならなかったかもしれない。しかし身も蓋もない今ある現実としては、ウクライナ危機の優先順位は、差をつけられての三番目というところでしょう。
現在のヨーロッパにはウクライナよりも大きな難題が二つ、つまりギリシャ危機とイスラム国危機があって、少なくとも短期的にはそちらの方が重要なのはまぁ端から見ても正しい判断ではあります。それこそ地政学におけるウクライナ問題なんて冷戦崩壊後の欧露関係にずっとあった難題で、未だにそれが解決できていないということは、これから先短期的に見ても解決の見込みがないことの証明でもある。


ロシアとヨーロッパの境界線上にあるウクライナの扱いを、一体どうすればいいのか?
――ヨーロッパ側に行けば必ずロシアは激怒する以上、ならばこのまま現状維持でいいではないかというのは限りなく(少なくともリアリスト的には)正論であり、実際これまでは騙し騙しそうやってきたのです。ところがアメリカと並び民主主義制度の最大の擁護者であるヨーロッパは、もしウクライナ国民が「民意として」それを表明した時、ウクライナかロシアかの二者択一がやってくる。ロシアが激怒するのを避けることを優先して民主的意思を無視し続けることができるのか?


この欧露間にある最大の難題を解決できないからこそ冷戦後のヨーロッパ(ついでにアメリカも)は迂回どころか一足飛びに、NATOとの協力関係やG7の参加などを通じて、ロシアをそもそもヨーロッパと一つにしてしまえばいいと努力してきたわけで。いやまぁそれらは概ね失敗したんですけど。
かくしてヨーロッパにとって、現在のウクライナ問題はToDoリストのせいぜい三番目位にしかない。
ギリシャ財務相、対ロシア追加制裁を不支持との報道を否定| Reuters
どころかむしろ、ギリシャ危機に見られる欧州連合内の分裂や国内での急進的政治勢力台頭の問題においては、本来一致団結して解決策を模索するはずの対ロシア政策はただの政争の具にすらなっている現状だっていうね。
まさに当事者である彼らはウクライナ問題「も」無視できない故に、極右にしろ極左にしろ急進的政治勢力たちと既存政党はそれぞれの違いを出そうとする為だけに対ロシア政策の変革をやり玉にあげることになる。それが強力な政治権力を握るプーチンさんへの憧憬=親ロシア的表明であったり、あるいはウクライナを救うためだと現状の対ロシア政策を腑抜けだと批判しより強硬な=反ロシア傾向を強めたりする。でもやっぱり実のところ彼らにとってその政策そのものが最重要ではないんですよね。むしろ本題はユーロをはじめとする経済問題や欧州連合における移民問題などこそが本丸であり、ウクライナの問題はその手段でありオマケでしかない。


こうした点から見ると、今のウクライナはあの時のポーランドであると同時に、あの時のベルギーであるとも言えるかもしれないなぁと少し思います。その存在の軽さ故に。
ウクライナは政争の具ではない。国である」なんて。


がんばれウクライナ