「国際社会の平和と安寧」と「自国国民の安全」というトレードオフ

「お前の国民が焼殺されるリスクを許容するほどの価値はあるか?」という問いを『イスラム国』から突きつけられる私たち。


邦人人質事件、参院も非難決議採択 山本太郎氏は退席:朝日新聞デジタル
山本太郎氏のテロ非難決議棄権 民主・榛葉氏「決議の意味、分かっているのか?」 連携見直しも… - 産経ニュース
山本太郎はテロリスト?! | 山本太郎オフィシャルブログ「山本 太郎の小中高生に読んでもらいたいコト」Powered by Ameba
お、おう……まぁ退席するのは自由であるのでともかくとして、まるで自分だけが決議に不満があり、自分だけがそれを行動に移せたのだ的なミサワ感が出ているのはアレかなぁと。二百人以上の国会議員が居て(政治的力学も含めて)その中での最大公約数的な意見として出されたのがアレであってそりゃ誰だって多かれ少なかれ不満はあるのは当然ですよね。おそらく自民党の中にすら居るでしょう。その意味で言えば、上記民主党なんかの人が怒るのも無理はないと思うんですよね。彼らだって野党として当然不満点はあっただろうにまるで彼だけが不満があったように見えてしまう。
仮に山本さんの個人的意見を取り入れたとして、じゃあ他の人の意見を同様に取り入れないのはどういう理屈で正当化するつもりなのか、についてはぶっちゃけ「退席」云々よりも民主主義政治に生きる政治家として意見を聞きいてみたいところではあります。まさか寄せ書きみたいに国会議員全員の意見を併記するつもりなのかな?
まぁそうしたことを考えると、本人の論理の妥当性云々ではなくそれを実現するだけの発言力が無かったから退席しました、というとってもハラショーな構図かなぁと。




ともあれ、結局のところ、『イスラム国』が今私たちに突き付けているのは、典型的なトレードオフなんですよ。あるいは、少なくとも彼らの主張を真に受けてしまうことはそのような二者択一を容認してしまうことでもある。その意味で彼の言っている「「屈しない」「許さない」と言う話にとらえられないでしょうか?」ことは正しい。
私たち日本人は日本国憲法前文にあるような「平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会」の一員として、平和と安寧を目指し苦しむ人たちを支援することが出来る一方で、その行為は必ず頭のおかしい狂信者たちから因縁を吹っ掛けられる可能性を排除できない。
海の向こうのイスラム国で何人死のうが平和を愛する日本とは無関係だと無関心を貫くこともできるものの、それは今後それをやるだけのリソース(金)がありながら何もしない国というレッテルから逃れることもできない。


私たちはどちらでも選ぶことができる。しかし、是非はともかくとして、多くの「平和を愛する」諸国家がそうしているように現在の国際社会の潮流としては最早どちらか一方を選ばなくてはならなくなっている。リベラルな国際協調の時代ってすばらしいよね。

中東地域で現在、武力による直接攻撃を行っている有志連合国とは一定の距離を置かなければ、
日本国内がテロの標的にされる可能性が高まる、

と考えました。

山本太郎はテロリスト?! | 山本太郎オフィシャルブログ「山本 太郎の小中高生に読んでもらいたいコト」Powered by Ameba

毎回書いていますけども、別に中東で『イスラム国』に苦しむ人たちがどうなろうが知ったことではないと利己的に書くのは構いませんけども、こういう言い方じゃまるで欧米や中東諸国を中心とする有志連合参加国が「自国国民の安全を軽視」しているようで事実上彼らへの批判にもなっていることに気付かないのかなぁと。
戦う君の歌を戦わない奴らが笑うだろう――どころか後ろから石を投げている構図 - maukitiの日記
自分が何もしたくないと宣言するだけじゃなくて、参加している国の選択までけなしている。自国中心主義過ぎて他国をdisってる構図でしかない。根本的に有志連合のあり方そのものがクソだという一理ある意見はありますけども、しかしそのことに今更文句を言ってもまぁ始まりませんよね。社会が悪い、世界が悪い、環境が悪いと言っても現実には何も解決しないのだから。不満があれば旗を振れば良かったんですよ。
――かくして国際社会の一員でもある『国家』としては、どちらにも残酷な結果が待ち受けうる選択肢について、旗幟を鮮明にしないわけにはいかない。


もし政治家ではなく私たちミクロな国民=個人的ポジションであれば、特に意思表明もしないままこの重すぎるトレードオフに解答しないことだってできるでしょう。世論調査でいう所の「よく解らない」的解答。何を言っても必ずデメリットが存在する100点満点のベストな解答なんて存在しない。そんなややこしくメンドくさいことは自分が決めることではないのだという責任回避。実際、情報入手の限界がある個人にとってこうした問題の回答に敢えて無関心でいることは、それなりに合理的でもあるでしょう。
――しかし国際社会に生きる日本政府は自身のポジションの表明としてそうしないわけにもいかない。外交的にも安全保障的にも在外日本人の生命保護という意味でも、何を選んでも必ずリスクのあるこのトレードオフに対して、何かしらベターな立ち位置を明らかにしないわけにはいかないのです。
その上で、今回の件で日本政府に政策変更を迫ることは結構なことなわけですよ。そのように政治的意見を表明する自由は幸運なことに、近隣にあるいくつかの国家と違って、日本では国民にも政治家にもその権利がある。しかしそれを望むというは、同時に上記トレードオフにも答えないといけないわけで。
もちろんそこに関与の濃淡はあるにしても、この二者択一を選択しないまま選択自体が間違っているというのは意味がないんですよ。


イスラム国はこうして有志連合に加わることのリスクを提示してみせている。私たちは彼らの行為を黙認し無関心であることのリスクを目にしている。
どちらも行く手には困惑してしまうような結果が待ち受けている。
だから山本さんの「懸念がある」のは正しいと言っていいし、でもそんなデメリットがあるのなんて当たり前ですよね。有志連合と行動を共にしないことのデメリットだって当然あるように何を選んだって何かしらデメリットはあるんですよ。問題なのはそれらリスクを比較した上でどちらがマシかということだけ。
その意味で、ぶっちゃけ彼は事実上何も言っていないに等しいよなぁと思います。何をやったって危険はあるし、100%絶対安全であることなんてあるはずないのなんて当たり前ですよね。い、いやまぁ脱原発運動のアレとか見てると少し心配にはなるんですけど。


さて、みなさんはいかがお考えでしょうか?