『価格』が与えてくれる幻想の満足感に生きる私たち

なんか最近書きやすいのもあって、荒んだ『イスラム国』ネタばっかなので偶にはほのぼの日記。



なぜ人は「$9.99」のような端数の価格に引き寄せられてしまうのか? - GIGAZINE
タイトル詐欺感はありますけども、まぁ日常生活でもありふれた風景ではありますよね。

人には数字を左から右に読んで理解する習慣があるため、一番右にある「.99」などの数字よりも、一番左に書かれている数字に最も強い印象を受ける傾向があることがわかっています。これは「Left Digit Effect(左の数字効果)」と呼ばれる効果で、例えば「10.00ドル」と「9.99ドル」の表記がある場合、その差はわずか1セント(約1円)しかないにもかかわらず、消費者の受ける印象は「10ドル台」と「9ドル台」というように大きく違いが生じるというもの。このような心理的な傾向を利用した価格設定は「心理的価格設定」と呼ばれ、お得感を与えて購買意欲を刺激する手法として古くから用いられてきました。

なぜ人は「$9.99」のような端数の価格に引き寄せられてしまうのか? - GIGAZINE

『左の数字側効果』について。ただ世界には右から左読む社会もあったりするので(戦前日本やアラビア文字とか)その辺はどうなのかなぁと少し疑問ですよね。同じく効果的であって単に『右の数字効果』になるだけなのか、それとも右からだとそんな効果は無かったりするのか。


ちなみに特に役に立たないトリビア的なお話をすると、こうした端数下げ価格には購買意欲刺激効果がある一方で、一般的にはそもそもの起源としては別の理由が言われています。(わざわざ計算の手間が増える)「お得な」端数の数字が生まれたのは今で言うレジ係=キャッシャーのちょろまかしを防ぐ為、だそうで。高い確率でお釣りが必要となるこの価格であれば必ずレジを開けなければならず、レジの開く音を出すことで、店主が従業員の盗み=レジを通さず金だけ受け取ることを抑止するのだと。
――心理的価格設定とどちらが先に生まれたのか、というとやっぱりこっちかなぁと。


まぁこの辺は基本的な前提のお話なのでともかくとして、

研究では、シャンパンのような嗜好品や娯楽用品と計算機のような実用品に対してさまざまな価格設定を行い、どの価格設定が最も選ばれたかを検証。すると、シャンパンが最も売れた価格はキリのいい「40ドル」であったことが分かり、「39.72ドル」や「40.28ドル」といった価格設定はあまり購買意欲を駆り立てなかったことが分かりました。一方の計算機のような実用品の場合は、予想どおりに「3.99ドル」のような端数価格だったことがわかっています。
さらに別の研究では、参加者に対して1台のカメラを買うように指示したのですが、その際に「行楽に持って行くため」と「授業で使うため」の別々の目的を与えました。すると、行楽用のカメラはキリのいい価格が選ばれる傾向に、そして授業用のカメラは端数価格が選ばれる傾向にあったこともわかっています。
どうやら、購買者は端数価格による「お得感」を重視するのと同じぐらい、嗜好品やぜいたく品に対しては「お買い得感で選んでいない」という「満足感」を価格から感じている様子が明らかになってきました。消費者がものを購入するという心理には、さまざまな背景が反映されているようです。

なぜ人は「$9.99」のような端数の価格に引き寄せられてしまうのか? - GIGAZINE

これって上で言うところの『心理的価格設定』そのものですよね。上記では「10ドル台」と「9ドル台」という認識差を強調していましたけど、それって贅沢品や嗜好品だって同じなわけで。
ある種ファジー制御なスーパーコンピューターでもある私たち人間の脳は、上記のお買い得品を買う時のように厳密な数字そのものを使って行動指針を考えているのではなくまぁ適当に「なんとなく」考えているわけですよ。だからこそこの複雑怪奇な世界でも所謂『フレーム問題』に陥らずに機能停止せずに生きていける。そんな人間の脳の適当さに上手くつけ込んでいるからこそ「端数99」戦略は有効でもある。
そしてこれって高額商品を買う時も同じでしょう。
こちらも当たり前の話ではありますが、商品価値と価格って綺麗に比例関係にあるわけでは絶対にない。10000円の商品が1000円の商品の10倍の価値があるわけでは絶対にない。それでも、そこに何かしらのプレミアムを見出してしまうのはまさにその高額な『価格』そのものに寄与する所が大きい。高額商品は、まさに高額であるからこそ意味があり、その高額な商品を敢えて買うからこそ贅沢を味わうという満足がある。
この点を考えると、実際の商品価値だけでなく、40ドルの贅沢品や嗜好品よりも50ドルの価格自体がより大きな(多分に幻想とはいえ)満足感を与えてくれるのは概ね間違いないでしょう。つまり上記の心理効果そのままに「大きな数字」で認識するという意味で言えば、50.99ドルと50.00ドルはかなり近い価値認識になってしまう。どちらも同じ50ドル台商品であるならば、そりゃ多くの人が後者を選びますよね。
――そして49.99ドルと50.00ドルでも後者を選ぶでしょう。だってわずか0.01ドル追加するだけで「50ドル台の高額商品」というプレミアムを得ることができるのだから。


買い物をすることによる満足感という意味では、どちらもまぁ同じお話ではないかと思います。お買い得商品を買って満足。敢えて高額商品を買うことによる満足。人間の脳っていい加減だなぁと暖かい気持ちになるお話ですよね。でもそれがいい。


みなさんはいかがお考えでしょうか?