でもむしろそれって所謂独裁者であればあるほどウェルカムなんですよね。
ロシア国民の心を巡る「テレビと冷蔵庫の戦い」 西側は戦場でプーチンと戦うより、弱いロシア経済を狙え：JBpress(日本ビジネスプレス)
まぁなんというか、端から見ている分には楽観的な予想に満ち溢れた考え方だよねぇと。いやプーチンさんの圧力の正面に立つ当事者だからこそ、そう信じたくなるという切実な面もやっぱりあるのでしょうけど。
プーチン氏は今日の紛争と、ナチス・ドイツに対するロシアの「大祖国戦争」との間に類似点があるとしている。ただ、そこでほのめかされている見方、すなわちロシア国民は今後拡大する物資の欠乏に再度耐え抜く用意があるとの見方には、恐らく根拠がない。
もちろん、ロシアはちゃんと機能している民主主義国ではないため、国民の間に不満が広がっても政府に直接圧力がかかるわけではない。しかし、プーチン氏は、生活水準の向上という国民への約束が自身の人気において重要な部分を占めていることを承知している。物資の欠乏や孤立はあまり魅力的な話ではない。
ロシア国民の心を巡る「テレビと冷蔵庫の戦い」 西側は戦場でプーチンと戦うより、弱いロシア経済を狙え：JBpress(日本ビジネスプレス)
過去、多くの事例において『経済制裁』の推進者はまさにそう考えてきたのは確かでしょう。
――でも、その歴史が教えてくれるように、多くの場合でそうした考え方は裏切られることになるわけで。皮肉というか、当然の帰結というか、国際的に孤立することが国内政情の安定に繋がることはしばしばあるんですよね。
その代表格である終身大統領であったカストロさんなんて、まさにそのアメリカによる制裁こそが彼らの地位を確固たるものにした。あるいはイラクの経済制裁は、無辜のイラク国民を何十万人と犠牲にしたという点で悪名高き＝イラク弱体という意味では効果のあった（だからこそイラクは大量破壊兵器を諦めたと指摘する人も結構いる）経済制裁ではありましたが、フセインさんの政治権力はまったく揺るがなかったわけで。で、結局子ブッシュさんは直接殴りに行ったわけですよ。あるいは、私たち日本の身近な頭痛のタネでもある北朝鮮さんちの金さんなんてその事例の筆頭ですよね。
制裁を受け続ける彼らはまさに「国際的に孤立」しているからこそ、しかしその権力は安泰でもある。
でもこんなことは多かれ少なかれ、少なくとも当局の中の人にとっては解っているはずで。
悲しいのは、こうした帰結が明らかであっても尚『経済制裁』は魅力的な選択肢であることでしょう。だって少なくとも直接に殴り合うよりもずっとマシだから。何も打つ手がないように見えるよりは国内的にも対外的にもずっとマシだから。
――かくして「何もしないよりはずっとマシ」というもっともな理由で選ばれる経済制裁たち。
冷蔵庫とテレビなんて仰っていますけども、今回のロシアへの対応も概ね構図としてはこの辺ですよね。それが上手くいくかと言うとあんまり期待できない。もちろん国民は苦しめずに権力者だけをターゲットにするのだ、というのは可能ならば素晴らしいやり方ではあると思いますけども、でもこれまでそんな風に上手くいったことなんてないわけだし。むしろ大多数の事例が教えてくれるのは、経済制裁で苦しむのはどうしようもなく国民たちの方である。
それを解っていても尚、しかし現在のヨーロッパにはロシアに対してそれ以外の選択肢などない。
その一方で、クリミアを喪失し東部ウクライナをも蚕食されつつあるウクライナにも武力衝突はやめようというヨーロッパの平和を愛する人たち。
親露派が東部の要衝制圧 ウクライナ大統領、平和維持軍派遣を要請 写真5枚 国際ニュース：AFPBB News
そりゃ親露派勢力だけでなくウクライナすらも停戦合意なんて約束信じるはずありませんよね。あの停戦合意の問題は、単にロシア側が約束を守らないというだけでなくて、そもそもウクライナ側もその停戦合意に本気でコミットしていないという点にあるわけですよ。故にひたすら現実主義のメルケルさんは「かすかな希望だ」と身も蓋もないことを仰っているわけで。（少なくともウクライナの右派である）彼らは失くしつつある領土を取り戻すにあたってヨーロッパの対ロシア政策をまったく論外だと見ていて、そしてその限りなく確信に近い推測は、悲しいことに、正しい。
いつか見たチェコスロバキアみたいだよねぇと。
もし世界にロシア＝ウクライナ以外の問題がなければ、譲歩を引き出せたかもしれないのにね。しかし中国の存在やイスラム国問題のある2015年初頭の現在、プーチンさんはおそらく別にここで突っ張りまくってもそこまで致命的影響はないと考えていて、おそらくそれもまた、正しい。
いやぁやっぱり悲しいお話です。
みなさんはいかがお考えでしょうか？
