アメリカ版『新思考外交』の時代へ

は本家と同じ効果をもたらすか?



この道はいつか来た道 〜クリミア併合とエチオピア併合 - リアリズムと防衛ブログ
ということでお馴染みリアリズムと防衛を学ぶさんのとても為になるお話。今日なんとなく横のリンク見たらリンク切れててほんとごめんなさいするしかない。
ともあれまぁうちの日記でも散々書いてきたように僕も概ね同じポジションであります。今回一連のウクライナ騒動で何がビックリかって、(もちろんクリミアを巡って歴史的地政学的経緯としてはそれなりに一理あるとしても)どう見てもロシアが「重要な土地だから」とクリミアを奪い取ったにも関わらず、欧米を中心とする国際社会はほとんど口だけの非難とそれほど本気ではない経済制裁に終始したっていうね。
この辺は中国の南沙諸島の基地化も同様で、再びやったもの勝ちな時代が地平線上に見えつつあるよなぁと。

人類は数十年をかけ、大きな堤防を築いてきました。それは「武力で国境を変更してはならない」と固く刻まれた規範です。クリミア併合がそれに穴をあけたとすれば、やがてその1点から水が漏れ出し、濁流となって、全てを押し流してしまうかもしれません。

この道はいつか来た道 〜クリミア併合とエチオピア併合 - リアリズムと防衛ブログ

ただまぁぶっちゃけその『堤防』の大部分を担っていたアメリカがその役割を放棄しようとしている以上、当然の帰結でもあるのかもとは思います。
あるいはそもそもそんな国際秩序も幻想だったのかもしれない。もしくはこれから幻想だったと見なされるようになるかもしれない。まさに現在振り返ってみての冷戦構造のように。今の私たちからすればあんなもの終わるのは必然だったと見ることが出来ても、しかし当時の人たちからは、まさに避けようのない運命として認識されていたわけで。




当たり前の話ではありますが、アメリカという国が第二次大戦から学んだ教訓というのは、私たち日本のような敗戦国と根本的に違うわけですよ。つまり彼らにとってあの戦争から学んだ教訓とは「例え遠隔地の戦争であっても、事態を軽視し行動が遅れれば、多大な犠牲を払わねばならなくなる」というモノでありました。故に従来孤立主義・内向き志向であったアメリカの外交政策は戦後から大転換したと言われるのです。
しかし、現状で私たちが目にしているように、冷戦後のアメリカは外交的関心を薄れさせてきた。その意味ではしばしば日本批判として言われる「戦争の教訓を忘れつつある」というのは実は、むしろアメリカの今の方がずっと当てはまるんですよね。
『9・11』によって一瞬の復活はあったものの、しかしそれも鎮火すると再びクリントン子ブッシュ初期―オバマの一連の流れ通りに、アメリカは海外関与を縮小させつつある。現在のシリアやイラクでのアメリカの放置っぷりが話題になりますけども、しかしこんなことはユーゴスラビアを筆頭に、ソマリアルワンダでも見られた光景であり、その続きだとも言えるんですよね。
決してオバマ政権の今になって唐突にアメリカの無関心が始まったわけではない。
冷笑的に見れば、あるいは反米的な人たちが言うように、結局のところ戦後アメリカの採ってきた外交政策は国際協調主義などではなくただの『反共』であり彼らが作り上げてきたのは見せかけの国際秩序だった、というのは今見るとそれなりに説得力のあるお話でしょう。
アメリカは堤防の役割あるいは堤防のフリという役割を、世界の警察官という役割から、(少なくともその一部について)降りようとしている。


所謂リアリズムな人たちが冷戦終結を予言できなかったのは、ソ連東ドイツから東欧諸国までの「防波堤」を見捨てるはずがない、と確信していたからでした。ところが現実には、ゴルバチョフやシュワルナゼによって『新思考外交*1』という国益の再解釈によってソ連外交政策は決定的な方向転換がなされ、東側陣営とソ連解体へと繋がっていったのです、
――翻って現在、まったく同じ構図で、今度は自由主義リベラルな人たちがほとんど予測していなかった国際関係の大変化に直面しているのだと思います。これまで疑いようのない常識であり全く堅固たる世界だと信じられてきた、その『国際秩序』『堤防』『領土不可侵』は、アメリカの「国益の再解釈」によって大転換を迎えつつある。
これら二つの大転換は、超大国による想定外の外交政策変化とその世界的影響という意味で、とっても愉快な相似だよなぁと。
アメリカ版『新思考外交』について。


さて、前回と同様に今回の変化もまた世界全体へと波及することになるのか? それとも前回のようにはならずアメリカがその役割を縮小させても尚、現状の国際体制は維持され続けるのか? その場合一体誰がアメリカが湾岸戦争クウェート解放で見せたような主導的役割を果たすのか?
国連軍なんてまずありえない以上、最有力候補はNATOでしょうか。しかしそこもまたアメリカの圧倒的影響力下にあるわけで。アメリカがこれまで背負ってきた役割を分かち合う国はあるのかというと以下略。
そんな中で「世界を半分こしようじゃないか」と微笑むのが現代中国なのは、こちらもとっても興味深い構図であります。


上記タイトルを借りれば、まさに「この道はいつかきた道」であり、アメリカの『新思考』によって次はどこの国があの時の東欧諸国のような歴史的大変動を味わうことになるのでしょうね?
――いやまぁもう中東がそうなっているとも言えるんですが。


みなさんはいかがお考えでしょうか?