相対的台頭と絶対的台頭の違い

ただ「台頭」というと微妙に勘違い感あるよねぇと。


http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43237
なんだか微妙に間の抜けた評論ではあるかなぁと。
ルペンショックはもう一度やってくるか? - maukitiの日記
そこは2009年に日本の政治が通った場所だ - maukitiの日記
フランスにおける(他人事とは思えない)愉快なルペンショックなお話については何度か書きましたので、まぁ省略。
上記過去日記でも書いてきたように、結局『国民戦線』が躍進しているのは別にフランスの主流政党が攻撃しなかったのではなくて、彼らが有権者から見放されているからこそ、そうなっているわけですよ。大統領選の最終戦決戦まで残ったあの初代ルペンショックでも構図は同じで、あれから10年以上経って尚も継続している、あるいは更に顕著にすらなっているかもしれない。
国民戦線台頭は、中道左派中道右派の双方の沈没、という意味でしかない。まぁそんなフランス政治で面白いのは、むしろ両者が政治的には正しく「中道化」した結果、右にせよ左にせよその極側に居た人たちの支持が国民戦線に流れている、という愉快なお話があったりするわけですけど。それこそ従来社会党支持だった共産志向な人たちもまた、中道化した主流派正当に見切りをつけてしまった。この辺アメリカの構図とは真逆なんですよねぇ。どちらがマシかと聞かれると困ってしまいますけど。


ともあれ、ここで日本の現状と奇妙に似ていると思うのは――いや別に安倍政権とルペンさんの「極右」政策が似ているとか愉快なお話ではなく――どう見ても「相手が沈んだ結果」としての想定的優位な現状がある事だよなぁと。
本邦でも所謂「政権批判」「反安倍」な声が少ないのは別に現政権が「絶対基準として」強者であるわけじゃないですよね。いやまぁもちろんこうしたお話に同意せず、現政権こそが自由弾圧者であり抑圧者でありつまり戦後最悪の独裁者なのだ、という人はまぁ一部にいらっしゃいますけども、どう見てもこの現状を構成しているのは選挙結果速報から言われていたように「それ以外のライバルたちの事実上の半死」という状況の方が近いでしょう。民主党を筆頭に、維新にしろみんなにしろその他有象無象にしろ、自民党のライバルたちは皆沈んでいっただけ。
自民党以外全部沈没。
かくして彼ら野党の影響力・存在感は致命的に低下している。これを安倍さんの強さだと見るのは――確かに運がいいことは認めますけど、微妙に間違っているんじゃないかと。政権交代前にあったとは真逆の構図で、あの時も「自民党の弱さ」と「民主党の強さ」をかなり混同していたので、悲しいことに日常風景なのかもしれませんが。

 中道左派中道右派の双方が攻撃の矛先をもっとFNに向けなければならないのは、このためだ。両者はFNの資金集めやロシアとの関係を明らかにするだけでなく、その間違った政策を真正面から攻撃しなければならない。

http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/43237

ぶっちゃけこのフランス政治についての評論も、そんな相対的優位と絶対的優位の違いを理解できていないよなぁと。攻撃手法の問題じゃなくて攻撃主体への信頼性こそが問題なのにね。
相対的台頭によってこそ彼らは勝利する。まずこの大前提を認めずに対応策を練ってもぶっちゃけ無駄ではないかと。
いやまぁ日本政治の現状においても、当事者なのにその違いを分かっていない分りたくない人は少なくないので、どっちもどっちなのかもしれませんけど。というかこうした構図は現代民主主義が避けられない宿痾なのかなぁとも思ったりします。


みなさんはいかがお考えでしょうか?