これは(ヨーロッパの我々にとっては)チェコスロバキアではない

(ヨーロッパにとっては遠く離れた事態である故に)まぁそうなるよね。


中国主導のアジアインフラ投資銀、英国がG7で初めて参加表明| Reuters
中国への「配慮」は悪いことではないかもしれない | JBpress(日本ビジネスプレス)
米国の同盟国を引き寄せる中国のマネー磁石 AIIBに英国などが参加表明、外交の失敗で孤立する米国 | JBpress(日本ビジネスプレス)
ということで大騒ぎの中国謹製インフラ銀行=AIID騒動であります。正直イギリスが真っ先に動いたのはかなり意外でしたねぇ。米国にとって太平洋側はともかくとして、大西洋側=ヨーロッパおける最重要同盟国であるはずのイギリスが真っ先にそれを表明するなんて。
ただまぁヨーロッパがこうした決断をすること自体はふつうに理解できるお話ではあるんですよね。
――だってヨーロッパと中国は遠く離れてるもの。
それは彼らがロシアの経済制裁一直線に走りながら、一方で(北方領土問題がありながらも)少なくとも対露関係ではまったく主戦正面に立ってはいない日本がほとんど一貫してそれに及び腰でせいぜいお付き合い程度の制裁にしか参加していないという面を見ると、とっても解りやすい相似だと思います。
――だってウクライナと日本は遠く離れてるもの。
やはり移動通信手段が進歩し小さくなった世界とされる21世紀の時代においても、心理的な意味で「距離」は重要なわけですよ。遠く離れている脅威であればあるほどその不安は劇的に薄れていく。

 ありがたいことに、一銀行に参加するか否かを決めることは、第3次世界大戦とはほど遠い。だが、問うべきことは、やはり詰まるところ、こうなる。中国は、策定に全くかかわらなかった規則に完全に従って行動することを求められなければならないのか? それとも、台頭した中国は必然的に国際的な規範に影響を及ぼそうとするのか?

中国への「配慮」は悪いことではないかもしれない | JBpress(日本ビジネスプレス

決定的に中国と決別するよりもここは関与することで発言力を確保しようとするヨーロッパは、その点で言えばまぁとっても現実的な振る舞いでしょう。だって「もしも」失敗して、中国の覇権的な勢力圏が東南アジアに出来たとしてもただちに影響があるわけじゃないから。
この一点で少なくともヨーロッパにとって今回の件はミュンヘン会談ではない、というのはおそらく正しい。
一方で、どうあっても逃れられないご近所に位置する私たちにとってはそんなこと言えるわけにはいかないんですけど。地理的な意味でも、そしてアジア開発銀行という現体制側という意味でも。
ということで今回の件は他人事である故に、気楽に振る舞えるヨーロッパはいいよね、という身も蓋もないお話でしかないかなぁと個人的には思います。ウクライナ問題ではまったく反対にもなるのでまぁそこを言っても仕方ないよね感。




ともあれ、今回の中国製AIIDの騒動において、意図せぬ結果を生みそうなのが、ヨーロッパのこうした関与へのアメリカからの批判が、むしろ日本からすると好印象に繋がるんじゃないかと。
本質的に日本がアメリカの振る舞いとして恐れるのは、日本を「飛び越えて」米中が手を結ぶことでもあるわけで。それはあの米中和解の時代から、日米安保に際してアメリカが本気で日本を守ってくれるのかという懸念まで、反米親米問わず対米政策についての中心争点になっている辺りそれがよく解りますよね。
現代日本という国の本質的懸念であり拭いきれない恐怖とは、良くも悪くも、アメリカに見捨てられることである。
その意味ではヨーロッパが参加を決めたことは、米国にとって事実上の失敗ではあるものの、そんな失敗したことで見せた拒否の態度が、皮肉にも日本に向けてのメッセージ――ただ親米派よりも潜在的日米安保懐疑派なポジションの人たちにも――安心感を与える結果にもなっている。


今回の一件は、相対的なアメリカ支配の後退であり米中対立の構造が確実に深まった一方で、その事態が日本に歪んだ安心感をもたらしているんじゃないかと。ぶっちゃけ逆の結果=アメリカがAIIB容認したらしたで、むしろそちらの方が「日本が見捨てられる」と大騒ぎになっていたんじゃないかと思います。
そのように考えるとまぁやっぱり皮肉なお話だなぁと。


みなさんはいかがお考えでしょうか?