第三どころか第二の選択肢すらないことを「反安倍」として叫ぶ悲劇、あるいは喜劇

野党不在の日本。


「安倍政権NO!」 安保政策などに反対、国会前でデモ:朝日新聞デジタル
えーまぁ、安倍政権の運営手法が危うさがあるというのには僕も同意します。でもそれは別に彼ら自身の性質の問題ではなくて、民主主義政治で必要不可欠なバランスを採るべき野党がいないからこそ、という一点に尽きます。別に自民党だろうが民主党だろうが公明党だろうが維新の党だろうが共産党だろうがその「危うさ」に変わりはないんですよ。
個々の性質が善悪かどうかが問題ではなく、それぞれの政治的野心を制度的に均衡させることこそが、民主主義制度の叡智なわけで。

 自民、公明両党が自衛隊の海外活動を広げる方向で合意して初の週末。日比谷野外音楽堂(東京都千代田区)で、学生らが集団的自衛権の行使や原発再稼働に反対する意見を表明し、その後、デモ行進をした。神奈川県平塚市のパート鈴木賢一さん(65)は「安倍政権は国民の声を聴かない。民主主義を尊重する政治を実現したい」と話した。

「安倍政権NO!」 安保政策などに反対、国会前でデモ:朝日新聞デジタル

「国民の声を聴かない」ですって。いやまぁ「(一部)国民の声を聴かない」と言い直すことが許されるならば、確かにその通りかなぁと。ただそうした構図がある一方で、安全保障政策における与党間の――自民党公明党の意見調整のアレコレの報道を見れば、かなり安倍さんが「話を聞かざるをえない」のも確かなわけで。
結局、反安倍な彼らは足元を見られているんですよね。有象無象として。とるに足らない存在だとして。


その意味で言えば、「民主主義を尊重する政治を実現したい」なんてバカだな、という指摘はまぁ悲しくなるほどに正論ではありますが、彼らの「発言力のなさ」という相対基準で言えばそれなりに正しくもあるんですよね。
これって先進国な日本や欧米諸国であるような(相対的)貧困問題と同じような構図なのだと思います。途上国や失敗国家にあるような真の意味=絶対基準においての貧困レベルよりは比較してずっとマシな生活ではあるものの、しかしその国内での相対的格差という意味では、まさに先進国であるからこそ貧困ラインの格差は悲惨なものとなる。故に彼らの人ととしての最低限の『尊厳』を救うためにも、先進国でこそ貧困にきちんと支援することが必要である。
大前提として、絶対基準では現在の日本のそれはどう見てもお隣の北朝鮮や中国とは比較にならないレベルで民主主義制度は普及していると言っていいでしょう。先日の日記でも書いたように、ただその絶対的規準の高低というよりは、まさにそれら独裁国家なんかと同じ「格差」があり、事実上一部国民が支持する意見に関して発言力がほぼ消失しているのはその通りかなぁと。
反安倍がJR電車内に安倍批判のシールを無断で貼る 「頭が幼稚なこども総理」「戦争が起きる国」 | ゴゴ通信
故に彼らはどう見ても平均以上に機能している民主主義国家に生きる有権者の一人でありながら、選挙ではなくまるで独裁下のようにデモや集会や非合法な活動にに一縷の望みを掛けようとしている。その点で言えば今回のような集会って、悲しいことに、独裁政権下におけるデモや集会よりも影響力がないわけで。安倍政権批判で味玉おまけにしたり、ビラを貼ったりするくらいなら、それこそ自民党のライバル政党の支援へリソースを使った方がずっとマシでしょう。それなのに彼らはしようとしない。あるいはしたくてもできない。
つまり彼らが感じる格差からの「民主主義が失われている」って、与党の横暴ではなく、むしろ彼らの意見を受け止め与党に対抗してくれる野党の不在という問題に行き着く。代議制民主主義政治としては、怒るべきは自民党ではなく、そのカウンターとなるべき野党の弱さの方なのにね。


ところが現政権には政治的ライバルが少ない。
――けどその不在って、どう見ても安倍さんあるいは自民党自身の責任ではありませんよね?


それこそ中国やロシアで現実に行われているような「野党政治勢力を弾圧した結果」こうなっているわけでは絶対にない。現政権は正しく選挙で勝っただけでしょう。まぁ不正選挙によってこうなっているのだという毒電波受信や普通の人には見えない角度が見えてしまってる人も居るかもしれませんけど。
いや、むしろ問題はそのような不正選挙が出る幕すらない、という現在の日本の政治状況の方なんですよ。おそらく現時点で正しくブレーキ役となっているのは有象無象な野党ではなく、連立与党である公明党の方でしょう。安全保障政策や原発政策が大事だと考える人は、もっと公明党に投票すればよかったのにね。現時点で結果論として見れば、その目的に関しておそらく最も正解に近かったのが公明党と言えるかもしれない。しかしそうした『第二の選択肢』を支持する声は、他の野党という選択肢と同様に、「反安倍」な所からは今尚出てきていない。
http://ouen100.net/
https://toriaezuno.wordpress.com/
かくして「自民党以外の何か」や「反安倍」とだけ叫ぶ人たち。いやほんともう悲劇としてゼツボーするか、喜劇として笑うしかない。


政権交代以来続く、「安倍政権NO」の声を受け止め糾合できるだけの政治家や政党の不在からくる行き詰まりを、こうして安倍政権へ向かって叫ぶのはなんだかとっても屈折していて愉快というか、現状の日本政治の歪みそのものだよなぁと個人的には思います。
独裁政権」ではなく「選挙結果」をデモや集会でひっくり返そうとする人たち。いやぁドン・キホーテ的風景で泣けてきますよね。それとも間接ではなく直接民主主義国民投票制度を導入しろという意味なのかな。ぶっちゃけそれでも同じ結果が出ちゃいそうなので、それは止めた方がいい気がしますけど。
民主党政権崩壊の先にあった、野党不在という歪んだ日本政治。やっぱりあの失敗は業が深すぎます。まさにあの時とにかく「自民党以外で」として勝った民主党があの有様で有権者から見限られてしまったからこそ現在の日本政治があるのにね。あれを教訓とするならば、今度こそ「自民党以外で」とかそんなバカみたいな理由じゃない政権交代を目指さなくてはいけないはずなのに。次回もそれでいい、というならばまさしく前回と同じことをやればいいと思いますけど。


ということでもし日本により良い政治を望むならば、ただ反安倍を叫ぶだけじゃなくて、自公政権にプレッシャーを与えることをできるだけの政党が生まれることを願う方が、ずっと生産的じゃないかな。


みなさんはいかがお考えでしょうか?