世界は力の空白を嫌う

米軍撤退からの古典的勢力圏争いの復活。


アフガン駐留米軍、撤収遅らせ年内は現状維持 オバマ大統領 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
そういえば結局、会談が決まった辺りから既に言われていた通り、アフガニスタンからの撤退を遅らせることになったそうで。まぁなんというかようやくオバマさんにとっての現実が追い付いてきた、という所なのかなぁと。それこそ一足先に撤退を進めていたイラクを見ると、典型的と言えば典型的な展開ではありましたよね。
米軍撤退が生んだ「力の空白」について。
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サウジとアラブ諸国、イエメンで軍事作戦 反政府勢力を空爆 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
この辺はイラクだけでなくもちろんシリアも、そしてイラン核問題やイエメンやイスラエルの暴走っぷりなどの最近の液状化する中東諸問題の主要背景の大きな一つではあるのでしょうね。米軍が引っ込んだことで生まれつつある「力の空白地帯」ひいては「地域大国化レース」に意気込んだり戦々恐々したりする人たち。いやぁ端から見ている分には国際関係のダイナミズムに不謹慎ながらwktkしてしまう時代です。
それこそオバマさんがイラクアフガニスタンの米軍撤退という公約を掲げた当時から「アメリカ軍が撤退したら滅茶苦茶になるぞ」とはかなり言われていましたけども、米軍の撤退がここまで劇的な影響――イラク政府統治力の消失から『イスラム国』台頭及び混沌波及まで――が出るとまで予想していた人は少なくなかったんじゃないでしょうか。


ただ一国内での混沌というだけでなく周辺地域一体にまで影響を与えたという意味では、それこそ第二次大戦にまで遡れてしまうようなレベルでの劇的な変化。思い出すのは第二次大戦直後にルーズベルト大統領が犯した東アジアでの失敗のようだよねぇと。日本を完全に負かしたのはいいものの、その後について(ヨーロッパ戦線以上に)ほぼノープランだったアメリカは、まぁあっさりと朝鮮半島半分および満州を火事場泥棒的にソ連に切り取られてしまった。現在まで続く朝鮮半島分断の原因そのもの。
ちなみにキッシンジャー先生は『外交』の中でその失敗について次のようにバッサリしています。

「日本の敗戦によって生じる空白を、別の力が埋めるという均衡論をルーズベルトは理解しなかっただけでなく、大国の勢力圏争いという考え方そのものを否定していた」

こうした古典的な勢力圏争いの数十年ぶりの復活、という意味ではまぁ現代の米国大統領にとってはおそらく誰であっても経験不足ではある以上、オバマさん個人の大統領としての資質がどうこうという失敗ではないのかもしれませんけど。


第二大戦後、旧ドイツや旧日本の力が消えることで生まれた真空地帯は、東アジアや東欧にその地域に勢力圏の劇的変動をもたらした。冷戦終結の際には染まる色はほぼ決まっていた。
さて、次はどうなるのでしょうね?