南シナ海は道(迂回路)ではない

日米同盟に外部性はある?


独立と主権を蔑(ないがし)ろにする異常な対米従属――日米首脳会談について/2015年4月29日 日本共産党幹部会委員長  志位 和夫
お、おう。典型的なポジショントークにマジレスするのもどうかと思いますけども、少しだけ。

しかし、今日の世界の大勢を見れば、軍事ブロックの解体・機能停止がすすみ、それにかわって外部に仮想敵を設けない平和の地域共同体が世界各地で大きく発展している。日本共産党は、直面する熱い問題で一致点にもとづく共同を発展させながら、日米安保条約を廃棄する国民的多数派をつくりあげるために全力をあげる。従属の根源――日米安保条約を廃棄し、それに代えて日米友好条約を締結し、真の対等・平等・友好の関係をつくることにこそ、21世紀の日米関係の未来がある。

独立と主権を蔑(ないがし)ろにする異常な対米従属――日米首脳会談について/2015年4月29日 日本共産党幹部会委員長  志位 和夫

確かに世界第二位の軍事同盟であったWTOワルシャワ条約機構は無くなったので「解体が進んでいる」というのは一部正しいかもしれませんが、最近の状況を見ると世界第一位の方のNATOといえばウクライナの騒動でむしろ活発になっているし、単純にアメリカ関係だけでなく『イスラム国』周辺における中東やアフリカでも仮想敵を設けた『軍事同盟』の存在感はかなり増していると思うんですけど、その辺は一体どう考えているのかなぁと。
むしろ国際社会に現実にある潮流としては全く逆で、にもかかわらず「軍事ブロックの解体・機能停止」を正当性に使うと、それって日米同盟の擁護に繋がるんじゃないかなぁと余計な心配を。世界がそうしているのならば日本だってそうするべきだよね理論の致命的な欠陥。




ともあれ、日米同盟が地域の安定に資する、というのはまぁ実際先日の安倍さんの演説でも触れられていて、ある種テンプレのようなお話ではあります。『希望の同盟』とかドヤ顔で言っちゃうくらいですよ。そういうのがあちらの一部の米国な人たちにウケた理由でもあるのでしょうけど。
ただ一方で、二度の大戦であったフランスとドイツ間にあった関係を考えると、それって実は微妙な面もあったりもするのかなぁと(思考実験的な意味で)思ったり。つまり、フランスが対ドイツ防衛に注力した結果があの「ベルギーは道ではない」な展開でもあったわけで。ドイツは見事に「二度も」フランス主力を迂回した。フランスがマジノ線なんか作ったせいで、迂回の通り道となったベルギーは犠牲となったのだ。
この辺の構図は、自宅の防犯を強固にしても結局泥棒は他所の家に盗みに入るだけ、な負の外部性的な構図を連想してしまうんですよね。
中国、南シナ海で埋め立て着々…比軍が写真公表 : 国際 : 読売新聞(YOMIURI ONLINE)
南シナ海で「環境戦」に乗り出したフィリピン 中国の人工島建設に対する弱者の戦い | JBpress(日本ビジネスプレス)
実際、地域の抑止力としてある一方で、そんな日米同盟の存在が中国のインド方面や東南アジア方面への進出のインセンティブとなっている面はそれなりにあるんじゃないかと。一部の方向の防御が固かったら別の方から出ればいい、というのは確かに合理的であるでしょう。その意味で言えば、日本の平和主義者の方たちが仰る「軍事力は根本的解決にならない」というのは確かに正しいのです。本気でやる気ならば、まさにドイツがそうしたように、攻撃者たちは迂回するだけだろうから。
この構図から考えると、もし日米同盟がなかったら、今南シナ海で大問題となっている九段線内の埋め立てはなかった、かもしれない。いやまぁ身も蓋もなく加速してたかもしれませんけど。




ということで共産党さんは、世界における軍事同盟の衰退、とか寝ぼけたことを言うくらいなら、この「負の外部性」という観点から、日米同盟破棄を求めたらいいんじゃないかな。「日米同盟があるせいで、周辺国が中国から狙われるようになったのだ!」というのは、おそらく、完全に間違った論理というわけでは多分ない。
もしかしたら周辺国の理解を得られるかもしれない。日本が防衛力を高めたせいで、中国を刺激し、別方向へ進むインセンティブを得てしまったのだ、なんて。
まぁそれで日本の選挙に勝てるかどうかは別のお話なんですけども。
やっぱポジショントークしてた方がマシですね。