「みんなに安売り!」から「貴方だけに安売り!」の時代へ

マクドナルドはお客様を見守っています。


マクドナルド、クーポンに回数・時間制限導入 ユーザーに戸惑い広がる - Excite Bit コネタ(1/2)
そういえばマックのクーポンがプチ炎上していたそうで。でもまぁ個人的にはただ迷走というよりは、むしろこの騒動は生みの苦しみでポジティブな評価を与えてもいいんじゃないかなぁと。

日本マクドナルドの広報担当者によると、使用制限があるものについては、アプリの仕組み上、間違えてクーポンをフリックして表示させて消えてしまった場合は、残念ながらそのクーポンを使うことはできないそうだ。

クーポンに回数・時間制限を導入した経緯は、「会員の方に無料だとか値引き率の高いクーポンを、よりお得感のあるかたちで配信できるように」という狙いがあり、また不正利用防止という側面もあるという。

マクドナルド、クーポンに回数・時間制限導入 ユーザーに戸惑い広がる - Excite Bit コネタ(1/2)

実際、かつてあった60円バーガーな安売りにはもう戻れない以上、こうしたクーポンに活路を見出すのは利益最大化を目指す経営戦略としてそこそこ正しいんじゃないかと。少し前にあった地域販売価格差別化なんかと併せていかにも現代的でグローバルな形で、この辺は非難轟々なカサノバさんの推しだったりするのかも。
以下現代ビジネスにおける「クーポン戦略」が持つ基本的なお話。



そもそも、何故昨今こうした『クーポン』という手法が生まれ流行しつつあるかって、利益最大化を目指す企業にとって大きな難問の一つは「顧客ごとに」販売価格を変えられない所にあるわけですよ。例えばハンバーガーに500円出してくれる人が居る一方で、100円しか出したくない人も居る。
売り上げを最大にするためには、金持ちには高く売り、貧乏人には安く売る。それがまぁ最適解なわけですけども、やっぱり実行は簡単じゃない。Aさんには100円で売りますけど、Bさんには300円です。あからさまに安易に『個別価格』なんか付けたら炎上必死でしょう*1。今でも一部後進国な地域で見られる、画一価格設定なんてない前近代的な商売「値札なし」な手法は、一定以上発達した社会ではもう不可能であります。だからこそ、各企業は適合戦略の一端として様々な付加オプション――キャラメル掛けたりチーズ乗せたりセット販売したり――であるわけですけども、やっぱりそれには限界があるわけで。


一体どうすれば消費者が払う気になるギリギリのラインに価格を個別設定することができるか?
――ここで登場するのがみんな大好き値引きクーポンであります。


つまり、販売価格を自由に変えられないのならば、値引き率で間接的に変えてしまえばいい。すばらしき発想の逆転。
これならばハンバーガーに500円出してくれる人も、100円しか出してくれない人も、最大多数をターゲットに出来る。便利なクーポンって、事実上、消費者別の『個別価格』の設定と同じ意味を持っているんですよね。
その意味で言えば、まぁ確かにスマホ発行ってそんな個別価格戦略とかなり相性がいいんですよ。会員登録された顧客情報と使用クーポンを紐づけて売買情報を得ることができるし。将来的には、それぞれの顧客ごとより柔軟な形で、表示されるクーポンの対象商品や値引き率が変わるところまで目指しているのだろうなぁと。
今回のマックのスマホクーポンの微妙な改悪騒動は、そうしたクーポンの使用タイミングといった情報をより詳しく集めようと目論んだものの、詰めが甘くて失敗したのだと思います。


つまり、マクドナルドは私たちの趣味嗜好、ハンバーガーの好みだけでなく、「幾ら支払ってもいいか」という基準までをも見出そうとしている。まぁ確かに「一律60円!」な大安売りよりはスマートだと言えるかもしれませんね。
こうした個別価格は一部(富裕層向けな)業界では結構昔からあったお話ではありますが、それを大衆的な所でやろうとしているのはマクドナルドがんばっているなぁと少し感心したので、冒頭のポジティブ評価に繋がるのでした。



スマホクーポンがもたらす、事実上の個別価格の時代へ。ただそれは私たちの個人情報とトレードオフでもある。まぁウィンウィンではあるかもしれませんけど。ビッグデータ時代の個人情報のすばらしき(?)活用。
みなさんはいかがお考えでしょうか?

*1:かつてamazonとかそれをやろうとして炎上したこともあったりする。