私たちは平和を愛しすぎてる

いつだってその塩梅が難しいんですけど。


来日中のフィリピン大統領、中国をナチスにたとえる 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで本邦でも大好きな人の多いヒトラーレッテルであります。アキノさんは日本社会をよく解っているなぁと別の意味で少し感心してしまいます。
ミュンヘン会談の二の舞を演じないために - maukitiの日記
いつまでたってもミュンヘンの悪夢が忘れられない - maukitiの日記
ミュンヘン会談については何度か書いてきたので割愛。

 都内で開かれた国際交流会議「アジアの未来(Future of Asia)」に出席したアキノ大統領は、中国の脅威とそれを抑制する米国の役割に関する質問を受け、「真空状態が生じて、例えば超大国の米国が『わが国は関心がない』と言えば、他国の野望に歯止めがかからなくなる」と回答。

 さらに、「私は歴史学を学んだアマチュアにすぎないが、ここで思い出すのは、ナチス・ドイツがさぐりを入れていたことと、それに対する欧米諸国の反応だ」と述べ、第2次世界大戦(World War II)勃発の前年にナチス・ドイツチェコスロバキア・ズデーテン(Sudetenland)地方を併合した際、「誰もやめろと言わなかった」と指摘した。(c)AFP

来日中のフィリピン大統領、中国をナチスにたとえる 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News

今回のお話で重要なのは前半の「米国の役割」こそが本題であり、後半の「ナチス」段はむしろアメリカへの釘差しなのでしょうねぇ。それをこうして日本で言うことの意味について。事態の悪化を防ぐためにこそ、アメリカが妥協しない、という空気を作らなくてはないけないと私たち日本にも言っているのだろうなぁ。アメリカがそうする(そして日本がそれを支援する)ことを強く期待する。
――「中国が勘違いしないだけの」対抗策を用意して欲しい、と。勘違いさせない程度の抑止力こそ。


実際それは特に厚かましい願いというわけでもないんですよね。
ミュンヘンやヤルタを繰り返させない」
これは特に冷戦後アメリカの外交政策の基本方針――というかモラルの根幹でもあったわけですよ。だから彼の要求しているのは正当な期待でもある。ちなみに面白いのは、子ブッシュさんが就任後初外遊のヨーロッパ訪問の一環でポーランドに行ったとき「今後いかなるミュンヘンも、あるいはヤルタも起こることはないだろう」なんて21世紀の安全保障に関して演説していたんですよね。
その意味で今のオバマさんの南シナ海での対応は(『9・11』以前の)子ブッシュさんと同じ路線でもある。



さて置き、そんなお話を前提にして、しかし今後ミュンヘン会談のような事例が再び起きるか、と言われるとまぁかなり頷いてしまうお話ではあるんですよ。実際南シナ海がそこに足を踏み入れかけているし、そしてそんな「当事国」だけでなく「私たち」もまたあの時と同じく平和を愛しすぎているから。戦争になるくらいならば(他国のことならば)見捨ててもいい、と考えるのは別に今も昔も不思議ではないでしょう。まぁまさにそれこそが当時にチェコスロバキアを見ていたヨーロッパ諸国の国民たちの率直な共通認識でもあったわけで。
そして、2015年の現代でも、私たちの日本などを筆頭に同様に考えているのではないかと。もちろんそう思うこと自体は決して否定できません。しかし同時にまた、平和を愛しすぎている故に、私たちは融和策の魅力を無視できない。


良くも悪くも、尚もミュンヘン会談を忘れられない私たち。
みなさんはいかがお考えでしょうか?