「ソ連人」たちと「ヨーロッパ人」たちが同じように見た華胥の夢

結局、幻想郷はありはしなかったよ。


EU崩壊はいつ、そして何故起こる / Sputnik 日本
うーん、まぁ、全てではないにしろ概ね理解できるお話。以前そんなソ連ネタの日記世界は尚も「垂直に」分裂している - maukitiの日記を書いてても少し思ったんですが、もちろん全てではないにしろ、そのソ連欧州連合の崩壊過程ってやっぱり少し似たところがあるかなぁと。

ソ連はどうして崩壊したのだったか。それは、中央政府官僚主義のためであり、中央政府の利害および公式イデオロギーソ連市民の大半およびソ連を構成する諸共和国の利害および世界観とどんどん乖離していったためである。それからもうひとつ。誰が誰を食べさせるのか、誰が働き、誰が楽しているのか、という点をめぐる、非難の応酬、これがソ連を破壊したのである。現在のEUにも見られるように、ソ連においても、非難の応酬が最初に巻き起こったのは北および南の諸共和国(EUの場合は国家)であった。ゴルバチョフペレストロイカが行われた比較的短い期間に、この非難は急速に世論に浸透し、かつて「ソ連は経済的には誰にとっても必要だ」と考えられていたのが、「ソ連は誰の利益にもなっていない」という正反対の方向に振れた。さらに、ソ連崩壊のもうひとつの理由に、連邦を構成する諸共和国の指導層に、ナショナリズムが台頭したことがある。休眠していたナショナリズムに急速に火の手が広がった。それも、一部のマージナルな人々だけでなく、一見文明的な大衆にまで、それが拡がったのである。

EU崩壊はいつ、そして何故起こる / Sputnik 日本

それこそどちらも全盛期には問題にならなかった人種や民族や国家という『区別』が、しかし一旦下り坂に向かうとその断層線が一気に表面化した。この辺はヨーロッパの失態をソ連が笑う事なんて全然できなくて、

同じような絵柄を、いま我々は、EUに見ている。しかも、ソ連においては「民族友好」政策はそれなりにうまく機能していたのであるが、その点EU諸国のリーダーたちは、もう数年前に、自分たちの多文化政策が失敗したことを白状させられている。

EU崩壊はいつ、そして何故起こる / Sputnik 日本

なんて言ってますけども、そんな「民族友好」の末路として有名なお話が、1988年のアルメニア地震では同じソビエト連邦にあるアルメニア人はソ連当局が集めた犠牲者救援の為の輸血(それは隣国アゼルバイジャン人のも含まれていた)を「自分たちの血が汚れる」と受け取り拒否した、ほどには憎み合っていたわけですよね。そしてあの凄惨な紛争へと繋がっていく。あるいは最近のウクライナ=クリミア問題だってそうしたソ連内にあった民族問題の地続きでもあるわけだし。


皮肉で面白いのは、ソ連の中の人にしろ、欧州連合の中の人にしろ、そうした上記『区別』については別に「あっても問題ない」と考えていた点であります。つまり、彼らはその共同体構成員たる諸人民たちはいつかイデオロギーや兄弟愛によって違いなど克服できると、同じように確信していたわけですよ。
――ところがぎっちょん、結果的には問題ないと思われていたそんな区別こそが末期ソ連の分裂を決定的にしたし、同じくヨーロッパの彼らの悩みの種となっている現状。かつてのソビエト連邦がそうだったように、今のユーロ圏の将来が不安視された時に起きたのも、社会の断層線が走るのは「まず」垂直方向=愛郷心や同じ構成員といったナショナリズムの方だった。
まさに現在愉快なユーロ騒動で私たちが目にしているように、それこそ貧しいギリシャ国民と連帯しようとする同じユーロ構成国である他国の貧しい国民たちなんてほぼ存在しないと言っていい。むしろギリシャ問題で明らかになっているのは、より一層、自国と他国、われわれとおまえら、という区別こそが強調されている。
最近のアメリカなんかでも、あれだけある貧富の格差といった社会階級よりもむしろ、地理や民族や宗教といった垂直方向の分裂の方が分断要因としては大きいと思いますし。


(国や民族や言語や宗教が違う)われわれはおまえらではない。
(国や民族や言語や宗教が違う)おまえらはわれわれではない。


彼らが夢見た理想郷、克服すべきナショナリズムがなくなり一体となって穏やかに暮らしていける社会、は尚も存在を確認されていない。少なくとも2015年ではまだ、幻想郷は幻想のままでしかなかった。この辺は世界平和に繋がる道として考えられている「世界市民」を目指す上での高すぎるハードル、あるいは歴史の失敗例として燦然と輝いていますよね。
このような失敗例を見ると、人間の業というか、社会変革の限界をどうしても感じてしまうよねぇとしみじみ思います。多くの人が夢見る既存社会の枠組みを超えた「共同体」って私たちにとっては華胥の夢でしかないのか。


みなさんはいかがお考えでしょうか?