(移民と難民の)冬来たる

「蛮族侵入」か「民族大移動」か。塩野七生先生風に言うと『ヨーロッパ人の物語11 終わりの始まり』辺り。こんな所まで偉大なるローマの真似しなくてもいいのにね。


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ということで、あちらでは名実ともに最も重要な社会問題となっている移民・難民流入に悩むヨーロッパであります。これまでの日記でも何度か書いてきたように、現代世界における最大の難問の一つがこうした南北格差からくる移民流入増加だと言われているのでまぁ不思議な話ではないし、もっと言えばヨーロッパといえばほとんど常に(広義の)蛮族流入に悩まされる歴史でもあったのでいつもの事だと言ってしまえるかもしれない。

 マケドニアでは20日、南隣ギリシャからの越境増加を受け、非常事態を宣言して国境封鎖を図った。だが、警官隊と移民らが衝突するなどして越境は止められず、移民らをセルビア付近に向かわせる方針に転じた。

 その結果、セルビアには先週末だけで約1万人が入国し、移民らはさらに北へと移動。国境沿いにフェンスを建設中のハンガリーは24〜25日、それぞれ2千人超の移民らを拘束したものの、多くが監視などをかいくぐり入国したもようだ。

移民ら大挙してバルカン半島北上、独では極右が排斥、マケドニアは国境封鎖 欧州各国で混乱相次ぐ(1/2ページ) - 産経ニュース

そろそろ本気でブリタニアEU外縁国のような飛び地にも蛮族侵入対策として現代版ハドリアヌスの長城でも作りそう、っていうかただ物理的な防壁だけでなく、沿岸警備強化や交通機関の取り締まり等々で徐々に出来はじめていますよね。


あの時のローマよりも今の欧州連合がずっと辛いのは彼らにとっての「パルティア王国」がないことだよねぇと。当時のメインとなる侵入経路は主に北方からだったわけですけども、何故東からは少なかったかって東にはローマと対立してたパルティア王国があり、そちらから来る蛮族の障壁になっていたと言われているんですよね。故にローマは仮想敵国でありながら彼らの存在を容認し、事実上両国は共存してもいた。
――でも今のヨーロッパってそんな「ローマにとってのパルティア王国」であるはずの、シリアやリビアを見事にぶっ壊して完全に障壁としての役割を喪失させちゃった自業自得感。まるで成長していない、どころか更にひどい。
パルティア王国という障壁を失ったローマ帝国の末路。それが現代ヨーロッパで再現されているんじゃないかなぁと少し思ったりします。


「蛮族侵入」か「民族大移動」か。それは当時の歴史をどのようなポジションから見るかで変わるお話ではありますが、やっぱりそれも今の移民と難民の大流入に悩むヨーロッパにとっても同じ構図なのでしょうね。ゲーム・オブ・スローンズでスターク家が言う処の「冬来たる」が現実となりつつある。
果たして将来このイベントはどのように記録されることになるのか。欧州統合に至る最後のハードルか、あるいは終わりの始まりか。
がんばれヨーロッパ。