「ハンガリーは道ではない」から始まる共謀

間接的とはいえまーたドイツ由来なのが面白いというか歴史の皮肉というか。


ハンガリー国境で衝突、警察が移民に催涙ガス 写真13枚 国際ニュース:AFPBB News
難民:ハンガリー国境封鎖で西に迂回 クロアチア経由 - 毎日新聞
難民流入でハンガリーが非常事態宣言 NHKニュース
ということでハンガリーさんちが非常事態宣言からの国境封鎖&放水催涙ガスによる制圧と見事に決断してしまったそうで。まぁそれこそ今のハンガリーの政権と言えば従来からアレなヨーロッパ首脳ということで欧州連合における頭痛のタネではあったので、ある意味順当な結果ではあるかなぁと。

ハンガリーには、旧ユーゴスラビアセルビアを経由して多い日には9000人を超える難民や移民が押し寄せており、政府は15日、セルビアとの国境に近い南部の2つの県に「非常事態」を宣言しました。国境付近には、すでに多くの警察官が配置されていますが、これによって軍の部隊を展開させることが可能になるなど、政府にはより強い権限が与えられることになります。
15日には、違法な入国を防ぐために国境沿いに設置されたフェンスを破損した場合の罰則を設けたり、密入国をあっせんした際の刑罰を重くしたりするなど、国境管理を強化する法律も施行され、すでに170人以上が拘束されました。

難民流入でハンガリーが非常事態宣言 NHKニュース

まぁでもそれなりに同情できる点はありますよね。まさにハンガリーは「道」扱いされていたわけだし。それこそ70年前のベルギーじゃありませんけど、本当にただ粛々と通過だけしてくれるならともかく、しかし彼らはドイツへと至る道扱いされるにあたって多かれ少なかれそれだけで済まされないのは確実であります。このまま道扱いを容認すれば、いざ目的地側へ出国することが困難になった時――というのが現実になっている――それはなし崩しに道ではなく一時居留地として扱われるのが目に見えている。
かくして防御の硬い右翼戦線は放棄して左翼側=クロアチア及びスロベニアルートを採ろうとする人たち。シュリーフェンプランかな?
でもまぁこのままいくと次にハンガリーに続きそうなのは(元々ブチッチさんは結構な民族主義派で心配されていた)セルビアオーストリアなので、更に迂回ルートを採る必要が出てきそうなのが難民たちにとって辛いお話だよねぇと。こうなると難所アンデルヌを突破するばりに、次は今でも結構ギリギリなバランスで治安をなんとか維持するボスニア・ヘルツェゴビナを通過するルートを採らねばならなくなる。
あるいは既にオーストリアも考え始めているように、ハンガリー及びスロベニアからの流入を制限しようとすると今度はただでさえ地中海ルートに悩まされるイタリアも他人事ではなくなってくる。



いやぁピタゴラスイッチのようなヨーロッパの動きであります。でもまぁそれこそ一次大戦から続く愉快なヨーロッパ国際関係の常ではありますよね。地続きで交通手段が発達した故に彼らは関係が深く、お互いに隣近所の振る舞いによる影響を無視できない。
ハンガリーは道ではなく国である」ハンガリーが道を拒否することで始まりつつある大激変。
でも実はこれってちょっと共謀なプロレス感はあるんですよねぇ。だってどちらも難民受け入れに関して、責任回避が可能になるから。こうして「道役」から「壁役」となりつつある彼らは自らの状況についての責任を「自分たちは(経済規模に見合って)そこまで大々的に受け入れるつもりはないのに勝手に通り道扱いされて困っている」と受け入れ表明国たちのせいにできるし、一方でドイツやフランスなどの国は「自分たちは大々的に受け入れるつもりはあるのに通過国が拒否する以上仕方ない」と事実上流入数をコントロールすることが可能になるわけで。


だから今回のことって実はヨーロッパが所謂「良い警察官と悪い警察官」をやっているだけで、裏では両者ともにwin-winなようにも見えるんですよね。結果として難民流入のコントロールへ繋がっている。欧州連合の分裂どころか、むしろ危機に際して生まれる結束強化になるんじゃないかと。


みなさんはいかがお考えでしょうか?