冷たい方程式に走る欧州各国たち

防波堤となるのは各国社会保障制度であり欧州人民の善意(支持)であり、だからこそその越水を懸念する人びと。


足止めされる難民 滞留恐れる各国、相互不信で国境閉鎖:朝日新聞デジタル
ということで中央での解決も見いだせないまま各国「独自の」解決策を図る国々であります。まぁ元々亡命及び難民受け入れについての『ダブリン協定』に穴があるから仕方ないよね。ぶっちゃけギリシャで繰り広げられたユーロシステムの欠陥と同様に、以前から指摘されていたそれがこうして非常事態にあたって見事に再び露呈しただけ、ということはできます。

 ドイツなどを目指しクロアチアに入った難民や移民1万人以上が20日も行き場を失ったままだ。周辺国は自国で滞留するのを恐れ、人々の流れを隣国で押しとどめようとする。関係国間の不信は高まる一方だ。難民12万人の受け入れ分担を話し合う23日の欧州連合(EU)緊急首脳会議に新たな波乱要因が加わった

>足止めされる難民 滞留恐れる各国、相互不信で国境閉鎖:朝日新聞デジタル

ともあれ、まぁ彼らがこうして慎重になるのは解らなくはないんですよね。だって単純にこれで失敗したら、既存の制度やその支持までをも一緒に失ってしまうから。単純に今のピーク時期だけ受け入れ能力から溢れておしまい、というわけにはいかないんですよね。
先日の鬼怒川の天災なんかで散々言われてお勉強になったように、所謂『越水』がおっそろしいのはただ超えただけでなく防波堤そのものを破壊してしまう点にあるわけで。溢れだした水は、そこから防波堤そのものを崩壊させてしまう。その意味で言えば、怒涛の如く押し寄せる難民たちもまた、同じ構図なのだろうなぁと。そのまま水量が増しもし溢れちゃうと次にやってくるのはその社会保障と国民たちの支持の崩壊をも意味することになる。
まぁそうなると待つのは地獄一直線であります。
せめて自らの場所からだけは越水しないようにと難民を押し付けあう外縁国のヨーロッパたち。それは何も自己利益のみを追求しようとしている結果というだけでなくて、せめて自分たちの受け入れられる=容認できる水量だけは維持しようとする善意の結果でもあるわけですよ。限界を超えた時にやってくるのは、その制度自体の破綻を意味するから。それが崩れてしまえば最低限の受け入れさえ不可能になってしまうから。



かくして彼らはそんな冷たい方程式の下に、難民を国境外で阻止しようとする。ほんとうに彼らがただ利己的であれば話は簡単だったのにね。ところが現実の彼らはまさに「今の」難民受け入れ枠を最低限でも守ろうとする故に、その国境を閉じる。最早救命ボートはいっぱいなのだと。いやぁ救えないお話であります。



しかしあれだけグダグダやりながらもユーロだってどうにか解決できたのだから、この難民問題だって解決可能かもしれないね(ユーロが解決できたとは言っていない)
がんばれヨーロッパ。