主戦場である台湾での軍事衝突を回避する為の全面的経済戦争を回避する為の南シナ海での軍事均衡

ザ・恐怖の均衡の連環は、幸運なことに、まだ続く。



米専門家が警告「南シナ海は中国の主戦場ではない」、中国が真っ先に狙っているのは台湾と南西諸島 | JBpress(日本ビジネスプレス)
うーん、まぁ、そうね。

イーストン氏が指摘するように、日本は降ってわいたような南シナ海問題に素朴に反応するのではなく、まずは従来からの脅威であり、懸念事項である南西諸島防衛と台湾有事のような周辺事態にこそ、外交および防衛資源を投入するべきなのです。

米専門家が警告「南シナ海は中国の主戦場ではない」、中国が真っ先に狙っているのは台湾と南西諸島 | JBpress(日本ビジネスプレス)

まぁ概ね正論だとは思いますけども、ただまぁこうした台湾という核心部分でない外縁部分=南シナ海で争うことは、それなりに両者にとって利点のある争いではあるんですよね。
――だってそこならどちらの両者も本気にならずに済むから。中間地帯ってありがたいよね。
お互いに「そこまで本気になる価値がない」という建前があるこそ、ある程度の自制を働かせつつ安心してゲームができる。八百長というほど共謀はしていないものの、しかしどちらもお互いに本気で敵対しないことを暗黙の了解にしている。熱戦だとは絶対に言えないし、冷戦というほどよそよそしくも(まだ)ない。




米中関係に関してしばしば言われる、いざという時になったら中国はアメリカ国債を売ると脅しを掛けるだろう、という予測がありますけども、あれってやっぱり荒唐無稽というわけではなく実際にあった歴史の教訓でもあるわけですよ。
まぁそれをやったのがアメリカ自身なんですけど。1956年のスエズ運河国有化に対抗しようとした英仏による軍事介入は、他にも米露協調なんかの要因があるにしても、少なくない要因の一つがアメリカの物理的な抑止力ではなく「英国債売ったるぞゴラァ」という経済面からの脅しでもありました。
転じて今の中国にそれをやられたらアメリカも困ってしまうわけですよ。まったくあの時と同じ様に「もし台湾に手を出したら米国債がどうなってもしらんぞ」と。もちろんそれは中国自身にも大ダメージな諸刃な剣であります。だからこそヘイワダイジョウブだとする経済的平和論は、やっぱりそこそこ根強いわけですけども、皮肉にも私たち日本自身が証明しているように、国家というものは経済的利益よりも国家安全保障を優先することはそこそこある。
それを解っているからこそ、現在の米中関係はサマーズ先生が10年前に指摘した『(金融版)恐怖の均衡』状態がまだ続いているのです。彼らはただ軍事衝突というだけでなく、おそらくその前後に始まるだろう、お互いがお互いに武器によらない経済戦争も心底恐れている。



そんな致命的な懸念があるからこそ、中国だけでなくアメリカもより「穏健な」対抗策として南シナ海軍事均衡状態を維持することに腐心しているわけで。従来致命的な軍事衝突を回避する為だった経済的攻撃が、ところがそっちもそっちであまりにも破滅一直線である故に相手にそれを使わせないために、更なる次善の策としてより影響度が低い所で軍事優位を目指すことで相手が諦めてくれることを期待している。
まぁ確かにそっちの方がまだマシだと言うことはできますよね。米中が本気で経済戦争を始めるくらいなら今位の軍事拡張競争をしていた方がマシだ、なんて。日本も同じだと言えるでしょう。台湾で戦うことになるよりも、経済で戦うことになるよりも、南シナ海で競争に付き合った方がマシだと。


軍事衝突を回避する為の経済衝突を回避する為に軍事均衡を目指す人たち。
これもうわかんねぇな。


がんばれ人類。