台湾に迫る二者択一

アメにムチにソフトパワーに。


中台トップ会談の結果――台湾国民は大陸を選ぶのか日米を選ぶのか?(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース
そういえば歴史的とされる中台首脳会談があったそうで。身も蓋もなく中台力関係の変化による必然の帰結ではあるかなぁと。

もし中台蜜月が実現すれば、日本は現在の南シナ海どころではないシーレーンに関する大きな影響を受けることになる。

筆者が最近、台湾の若者に対して行った意識調査では、「最も好きな国は日本」で、「最も嫌いな国は大陸(北京政府)」だった。民進党を支援している層は、親日だ。親米以上に親日だ。アメリカは1971年に「中華民国」を見捨てたのだから、その意味で反感を持っている若者は少なくない。
今般の中台トップ会談の意味と、それがもたらす影響は、東アジア情勢の分岐点の一つであるということもできる。日米、特に日本を選ぶか否かの分岐点でもあるということだ。これは日本企業のチャンスとも関係してくる。来年の総統選まで、目が離せない。

中台トップ会談の結果――台湾国民は大陸を選ぶのか日米を選ぶのか?(遠藤誉) - 個人 - Yahoo!ニュース

やっぱりこれはその通りなのでしょうね。
ジェームズ・ベイカー先生の外交家としての大正義発言である「われわれには関わりないことである*1」なんていうポジションを採るわけにはいかない。実際シリアなんてそうしていればいい、というのは――少なくともリアリズムのポジションに立つならば――正解でもあるわけですよ。わざわざ火中の栗を拾う必要はないのだと、冷ややかな無関心。
そんなポジションを台湾でも採れれば楽だったんですけどねぇ。ところがあまりにも近すぎて私たち日本は無視することはどうしてもできない。そして逆にヨーロッパなんかではこの中台の問題はそこまで真剣に受け止められないでしょう。尚も地理の世界に生きる私たち。


ともあれ、でもまぁ端から見ていて台湾さんちが(私たち日本と違って)複雑で大変そうだなぁと思うのは、上記リンク先でも言及されているように、多くの部分で「平和と自由」がコンフリクトする点じゃないかと思います。日本であれば、実際に正しいかはどうかとして、話は簡単なわけですよ。
「社会における自由が失われれば戦争に近づく」
まぁやはり現実はどうかとして、概ね頷けるお話ではあります。ところが今台湾が置かれているのは、尚も自由な社会を維持しようとすれば必ず中国と距離を置かねばならなくなる、という点であるわけで。二制度の実践者であった香港なんか典型例ですけども、中国との友好関係を維持すればするほど、しかし彼らの(経済はともかく政治的社会的)自由の幅はどうしようもなく狭まっていく。それは台湾も決して例外ではないでしょう。
――かといって中国との関係を、経済という意味でも国家安全保障という意味でも、冷たくするわけにはいかない。
この選択はやはり死ぬほど重要で、だからこそ部外者である私たちが簡単に「平和を!」とも「自由を!」とも言うことはできないよねぇと。それは結局どちらを支持しても、選ばなかった一方を多かれ少なかれ失うことは確実なのだから。


アメという意味でも、ムチという意味でも、ソフトパワーという意味でも、避けようのない二択圧力を受ける台湾さんちの行く末について。
日本がそういうポジションに置かれたとき、一体どうすればいいのでしょうね? 今の国民党政府のようにそれでも平和関係を望むのか、それともひまわり運動に走った台湾の若者のように対中接近を自由社会の後退だと憂慮すればいいのか。どちらも満たす選択肢があればいいのにね。しかし、悲しいことにそうではないことは、まさに今の台湾のように、しばしばある。


がんばれ台湾。

*1:1992年でのユーゴスラビア介入について。