もう20年以上時間稼ぎを続けるフランス

ルペン時代は(再び)延期となりました。


極右政党、全地域圏で勝利逃す フランス地方選 写真3枚 国際ニュース:AFPBB News
仏地方選は極右が一転全敗、右派野党優勢・社会党は退潮鮮明 | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
そういえばあれだけお騒がせだったフランスの国民戦線の盛り上がりも、なんだかんだでいつものオチに着地したそうで。

6日に行われた1回目の投票は、パリ同時多発攻撃を受けて国民の間で治安や移民をめぐる警戒感が高まっていたことを背景に、移民の排斥などを訴えるルペン氏の国民戦線が全国得票率1位に躍進した。

危機感を募らせた社会党は、ルペン党首が候補者となっている北部と、ルペン党首のめいが立つ南東部で第2回投票を辞退。国民戦線の勝利を阻むため、右派連合に投票するよう呼び掛ける「奇策」に打って出た。

仏地方選は極右が一転全敗、右派野党優勢・社会党は退潮鮮明 | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

うーん、まぁ、そうね。国民戦線潰しをがんばった成果が出て良かったよね、と言うことはできなくはない。

バルス首相(社会党)は「安心したり、勝利に酔ったりする場合ではない。極右が突き付けた危険が去ったわけではない」と強調した。

仏地方選は極右が一転全敗、右派野党優勢・社会党は退潮鮮明 | ワールド | ニュース速報 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

ただまぁ、今回もそうですけど、このルペン親子が明らかにしたフランス政治の問題って、短期的な彼らの「躍進」という所にとどまらない所にあるわけですよ。それこそ国民戦線が最初に「躍進」したのは80年代前半の事であって、もうそれ以来基本的には(99年の党分裂時なんかを除いて)ずっと緩やかに増加し続けてきた。だから今に始まったことでは決してないし、むしろ短期的でない長期的傾向だからこそ、この問題の根は深いわけで。
国民戦線』ってそれこそ本邦含む諸外国にありがちな、一時の話題で票を獲得するものの何回か選挙を経るうちに自然消滅していく政党たち、なんかとは文字通り一線を画した存在であるのです。彼らは地道に着実にフランス市民の支持を積み重ねてきた。
カメのように歩みはノロマながら、しかし彼らはゆっくりと進撃を続けてきた結果、今の位置――欧州議会選では既に第一党――にいる。前回それを見事に追い落としたのがサルコジさんだったわけですけども、また同じ構図に近づいているのはちょっと愉快なお話ではあります。


泡沫なんかではない彼らは強固な組織と支持層を持った大政党となりつつある。ところがそれでも、彼らが単純にフランス政治の中央に立てるかというとやっぱりそうでもない。こうして既存政党の「素晴らしき連帯」によって潰されたというのは、まぁ火に油を注いでいるとも言えてしまうわけで。
選挙敗北の仏「国民戦線」党首、政治システムは「瀕死」と - BBCニュース
今回の敗戦の弁であるルペンさんの言葉にもそんな思いが滲み出ていますよね。実際フランスのユニークな決戦投票制な選挙は大統領選挙を頂点に、必ずしも第一位の人が勝てない選挙でもある。ぶっちゃけその意味で言えば、ルペンさんがフランス大統領になるのはトランプさんが勝つよりありえなそうなお話ではあるのです。
次は2017年。まぁつまらない本命予想と言えばまさに今回同様、決選投票で敗れるルペンさん、という絵なんですけど。
いやぁフランスって必ずしも「一番人気の人が勝てない」っていうクソ民主的な選挙で良かったよね。実際そうした仕様というのは、国民戦線降ろしの是非はともかくとして、結果として生まれるのは「ルペン以外ならだれでもいい」という野合であるわけですよ。そこに候補者の資質や政策について真剣に考える余地などあるはずない。それが一度や二度ならまだいいでしょう。
――しかし最早その構図は、徐々に固定化されつつある。
それってどう見ても適切な民主主義だとは言えませんよね。その意味で、上記ルペンさんの言う「フランスの政治システムは瀕死」というのには一理あるのです。まぁその張本人なんですけど。


フランスさんちでもう20年以上続く民主主義政治の苦境について。こうして毎度毎度「ルペン以外ならだれでもいい」という選挙を繰り返すフランス。きっと次回も同じことやるんじゃないかな。


みなさんはいかがお考えでしょうか?