現代経済学はツライよ

変数大杉。


ギリシャ問題、実は「宗教」に起因していた! | ヨーロッパ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準
わーなつかしのプロ倫だー。まぁバカなお話だと言ってしまっては身も蓋もありませんが、書いている人が『講師』らしいので出来るだけ解りやすく物事を(あの池上さんぽく)単純化している、という点は留意してあげるべきなのかなぁとは少し同情します。
でもぶっちゃけそんな宗教要因だけで一国の経済パフォーマンスを説明できたら経済学者なんて要りませんよね。いやむしろ、現代経済学への批判として大きなものって「結局現実世界は複雑すぎて(後付けの説明は上手く出来ても)まったく役に立つ未来予測のツールになっていない」という点が主流でもあるわけで。
――「宗教に起因していた!」なんて風に単純化で説明できたら経済学者も楽で良かったのにね。

「イタリアは昔、ローマ帝国があんなにすごかったのに、今はなんでダメなの?」

とよく質問されますが、原因は宗教にあります。イタリアやスペイン、ポルトガルといった南ヨーロッパの国々が財政赤字に陥った原因は、彼らが信じるキリスト教カトリック教会の教えにあるのです。

ギリシャ問題、実は「宗教」に起因していた! | ヨーロッパ | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

まぁでもこうした要因がまったくないかというと、おそらく、そうではないとは個人的にも思うんですよね。むしろ宗教要因がまったくない、という方が間違っているでしょう。個人的には『制度*1』理論で理解しているお話ではありますが、そうした制度もまた宗教要因があるのは否定できないでしょうし。
――しかし、問題はじゃあ宗教要因が国家経済全体のパフォーマンスにとって「どれだけ」影響があるかというとそれはそれでまったく予測できないお話でもあるわけで。
その意味で言えば、『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』についてhimaginaryさんなんかの所でもちょくちょく話題に挙がるように、現代でも尚もその影響度の度合いについては研究されているわけで。そして尚も研究対象であるという事は、確固たる定説の不在でもある。


こちらは経済というより文化論として言われるお話ではありますが、一国の経済パフォーマンスに『宗教』要因が(どれだけ大きいか小さいかはここではさて置くとして)影響あるとした場合でも、しかしやっぱりそれはポジティブな意味とネガティブな意味両方を説明できなければならないわけですよ。
ある時には長所だった点は、また別のタイミングでは短所となる。
それこそ私たち日本の高度成長期には日本式労働は世界中で称賛されていたはずが、しかしバブル崩壊後はご覧の有様扱いであるでしょう。一方で改革開放以前の中国と、現代中国の成長だってどちらも「同じ」中国であるわけで。同様にギリシャだってドイツだってアメリカだって、良いときもあれば悪いときもあった。
それなのに単純に宗教要因「だけ」で説明できるはずありませんよね。


上記リンク先にある単純化された世界とは対極にあるような、複雑すぎる変数によって動く現代経済の世界。
だからこそ経済学者のみなさんはあれだけ苦労し、また役立たずと批判されまくっているわけで。いつか統一理論を打ち立て、役に立つ精度の未来予測ができるといいね。
むりそう。


がんばれ経済学者たち。

*1:経済成長を左右するのはその国や地域に、広義の伝統や文化によって、どれだけ経済成長に適した土壌=制度が根付いているかによって決まる的なお話。