オバマの冷徹

「もうぐっちゃぐちゃな中東なんてしーらない」の帰結。



サウジアラビア、イランとの関係断絶 大使館襲撃受け 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで何だかシーア派宗教指導者処刑から怒涛の展開であります。ここまで展開速いとサウジ処刑からイランの反発そしてアラブ連合連帯、というところまでセットだったのでしょうねぇ。
まぁずっと言われているお話ではありますが、サウジさんち(特に東部沿岸の産油地帯)ってかなりシーア派住民を抱えているわけで。故に彼らは治安維持の為に国内シーア派を弾圧しまくってきた。となるとイランからの要らん介入が今後ますますその傾向は増えていくことは確実でしょう。
イエメンはシリアより最悪な状況なのか? | ハフポスト
実際、まさにそうやってシリアは燃えているし、ちょうど一年前にも前哨戦とばかりにシーア派住民を抱えるイエメンではまさに事実上サウジとイランが代理戦争張りに衝突していたわけで。まがりなりにも両派が共存していた場所でさえご覧のあり様で、イエメンの次に出てくる宗派対立の舞台を考えると、まぁお察しであります。彼らの危機感もハンパではない。
シリアは既に燃えている→イエメンも既に燃えた→次はサウジかクウェートか(再び)バーレーンか。ザ・宗派対立の飛び火。これで次が起こらないと考えるなんて楽観すぎますよね。
かくしてサウジはアラブ連盟を巻き込みつつ先制攻撃に出た、という辺りが基本構図ではないかと思います。




米、中東の緊張緩和呼び掛け イラン・サウジ対立で 写真9枚 国際ニュース:AFPBB News
中東世界がこんな愉快なことになっているのは、それもこれもオバマさんのアメリカが関与低下したことがほとんど直接の引き金ではあるので、ぶっちゃけこんなことを言うのは皮肉過ぎる光景ではあります。アメリカは「二重の意味で」既存の中東秩序を支えていたわけですよ。つまりサウジの味方であることと、イランの敵であること。
――ところがぎっちょんアメリカはその両方を後退させようとしつつある。
単純にサウジに味方に付き続けることはほとんど泥沼のシリア=イスラム国を見れば(ついでに各種イスラム過激派との関係もあって)矛盾甚だしく、これまでもずっと批判されていたポジションでもありました。アメリカはサウジ独裁者と同盟国だ、なんて。一方で概ね民主国家でもあるイランとは核問題が一応の決着を見てついに長年にわたる制裁解除が秒読みに迫っている。
昨日の敵は今日の友。昨日の友は今日の他人。
かくして「もうぐっちゃぐちゃの中東なんてしーらない」なオバマさん。まぁ死ぬほど自分勝手で冷徹なポジションではありますが、それはそれで確かに合理的ではあるんですよ。古き良きアメリカの伝統的世界戦略は「地域覇権国を誕生させない」という点であり、だからこそその筆頭候補だったかつてのイランに対して徹底的に抑え込みを図っていた。
でも今なら手を引いてもサウジとイランの争いは、少なくとも短中期的にはせいぜい中東世界全体が泥沼なシリア化するだけで、それ以上に広がる見込みはない、ように見えなくはなくない。
今はまだ外交ゲームの域を出てはいないし、最悪でもせいぜい国家・宗派対立で「現地の」いっぱいひとが死ぬだけ。
現地で人が死ぬだけならば、まさに私たち日本人含む国際社会がシリアに対してそうしているように、知ったことではない。



アメリカというタガが外れることで従来あった世界観に舞い戻ろうとしている中東世界。
まさにそうした世界こそ目指していた『イスラム国』支持者たちは、オバマに感謝、しないといけないよね。


(自分で)がんばれ中東世界。
――byオバマさん及び無関心な私たちより愛をこめて。