「多極化の悲哀」の典型的事例

横暴なジャイアンが「一人」だけならまだマシだったのにね。


【社説】朴槿恵政権の中国重視外交のツケ、誰が責任を取るのか
そういえば昨日の日記を書いていて、そんな現代版スイスとは真逆な外交政策(周辺国の意向に可能な限り応えようとする)な韓国さんちはまぁ大変だそうだと思ったり。『バランス外交』とは本邦でも理想論的によく言われるお話ではありますが、まぁあちらを立てればこちらが立たずで、実践するのは「言うは易く行うは難し」を地でいくお話なのでしょう。
一方は周辺国(どころかほぼ世界全体)の意向などまったく無視を決め込むことで最後の一線こそ守りながらも完全に孤立する一方で、一方は周辺国の(勝手な)思惑にひたすら右往左往している。南北がそのまま外交政策の鏡の裏表と言うことはできるかもしれない。
南北に分かれた国家がそれぞれに愉快な状況に陥っているのは、他人事だとものすごく面白いではあります。




この辺は経済学――特に腐敗分野の研究で言われるお話ではありますが、「ゆすられる」相手としては強力で中央集権された一人の悪党の方がずっとマシ、という構図があるわけですよ。
強権を備えた開発独裁国家がその評判とは裏腹に成功する理由の大きな一つはこうした要因が挙げられるし、現代中国なんてまさにその典型でしょう。確かに彼らは腐敗し汚職が蔓延しているものの、しかし絶対的支配力を持つな中国共産党政府の意向・支持さえきちんと取り付けておけば、ビジネスをやる上でそこまで厄介なことにはならないからこそ、中国は世界に開いたマーケットとして成功しているわけで。これがもし例えば地方や各省庁ごとに中央政府の意向が通じない「弱い」政権であれば、それぞれの利害関係者毎に、賄賂を渡さなくてはならなくなる。
それなら唯一の巨悪の方がずっとマシだよね、っていう。独裁後の民主化祭りなんかで、特に経済成長の面で失敗する筆頭事例のひとつ。


その意味で言えば、一昔前に本邦で――それはそれで正論ではある―基地負担軽減なんかを念頭に「正三角形だ!」とかバカなことを言っていたバカな人がいましたけど、あれってむしろ日本が負担する利益供与って増大する未来しか見えないんですよね。確かにアメリカは概ね横暴で、彼らに事実上貢いでいることに憤慨する人は少なくないでしょう。
ピューリサーチなんかの調査を見ればわかりますけども、一般に韓国と言えば日本とは比較にならない程、というか世界的に見ても「アメリカに非好意的な国」でもあるわけで。
でも、だからといって、そこで例えば中国に近づくことでバランスを取ろうとすることは「中国からも」同じように利益供与を要求されることになるんですよ。中国と近づくことでアメリカの要求が小さくなる、ことは全くないと言えないものの、同時にやってくるのは中国側からの同様の要求でもあるわけで。
あちらに配慮するならば、その分上乗せして俺たちにもそうするべきだ、なんて。だからこそ上記腐敗研究では唯一の巨悪の方がまだマシだ、という結果が出ている。
そんな「多極化の悲哀」の典型的事例を体現する韓国。


もちろんそこをなんとかするのが「バランス外交だ」と言うことはできるんでしょうけど。でもやっぱり言うは易いというオチにしかほとんどならない。事実上無力なただの市民が、支配地域が隣接するマフィアの両方から求められるみじかめ料を、交渉して減額なんてことできるはずないように。


昔のようにアメリカだけ、あるいはいっそ中国だけに利益供与するだけで終わっていれば話は簡単だったのにね。しかし現実はそうではなく、まさに彼らは利益供与の多寡でも、結局は両者バランスを強いられている。支払えと要求される「配慮」は、半分どころか米中両方へと倍になっている韓国。北朝鮮さんちのあの振る舞いも、まぁ今の韓国の現状を見るとちょっと同意したくなる面はあったりしますよね。


でもアメリカが更に後退する未来というのは、それは日本の将来の可能性の一つ、でもあるので実は笑ってばかりではいられませんけど。
がんばれ韓国。