ケルンやスウェーデンを見てほくそ笑むポピュリストたち

「あなたのココロの不安お埋めします」



[FT]シェンゲン協定を救える最後の時(社説)  :日本経済新聞
シェンゲン死んでしまうのん?

 これは正当な提案だ。ギリシャやイタリアが、その地理的位置ゆえに何十万人もの難民保護の負担を法的に求められるのは不合理だ。しかし現在までのところ、EU各国が難民受け入れを分担する案は、自国の有権者の説得を拒む一部の国によって阻まれている。おそらく、この行き詰まり状態が続くだろう。その場合には、EUの中核国が共通の難民政策に従おうとしない国々を除外し、範囲を狭めた独自のシェンゲン圏を設定する以外に選択肢はないかもしれない。

[FT]シェンゲン協定を救える最後の時(社説)  :日本経済新聞

あっさりと書かれていますけども、この『説得』がまったく容易ではない辺りシェンゲン協定の生死を考える上でひたすら厄介なお話ですよね。
昨日の日記で少し触れた「不安を煽ることの利点」って確か去年の反省会日記でも少し書きたいと反省していたことを(忘れてた)思い出したので、民主主義政治において「不安」が力を持つか、についての適当なお話。


この「受け入れ分担案」を拒否する国たちが面白いのは、実際には「まだ」そこまで難民受け入れに伴うデメリットに直面しているわけではない、という点が端から見ている分には愉快であり、また当事者たちにとっては救えないお話でもあるわけですよ。
つまり、ここで反対運動をする人たちにとって都合がいいのは、現実の差し迫った課題を指摘する体裁をとりながら、その実「分担を受け入れれば治安が悪化する」と不安を煽れる点にある。ポピュリストな人たちの典型的な手法。
「もし言いなりになって難民を受け入れたら、あんなことやこんなことになってしまうかもしれないぞ!」なんて。
こうなると反論は難しい。そらそうですよね。議論しようとしても、現実に起きた被害ではなく、起きるかもしれない不安を相手に戦わなければいけなくなるから。ケルンやスウェーデンをはじめとする「難民騒動」な出来事は、最早彼らだけの問題ではなく、ある種の偶像としてのポジションを得るようになりつつある。
政治不信――というよりはむしろ欧州統合不信を煽ろうと、ほくそ笑む不安商法を得意とする人たち。ポピュリストな人たちにとってこれ以上ないほど絶好の好機。


この不安を煽られている状態の有権者の説得は簡単ではないでしょう。昨日の日記でも書いたように、彼らはそれこそを民主主義に則っているとまで主張する。
(直接)民主主義を取り戻せ!


がんばれヨーロッパ。