プーチン「レーニンのばか!」

民族的情熱は先天的か後天的か。


プーチン大統領「レーニンはロシアに原子爆弾をセットした」 - Sputnik 日本
うーん、まぁ、そうね。ペレストロイカの反省かな?

「思考の流れを管理するというのは正しい。ただ必要なのは、その考えが、正しい結果をもたらすようにする事だ。しかしレーニンの考えはそうではなかった。最終的に、その考えは、ソ連邦の崩壊といったことをもたらした。そこには、自治など多くの考えがあった。つまり、ロシアと名付けられた建物の下に、原子爆弾をセットしたのだ。ロシアは、その後、大爆発を起こした。世界革命なども、我々には必要ではなかった。」

プーチン大統領「レーニンはロシアに原子爆弾をセットした」 - Sputnik 日本

ソ連時代にあった『思考管理』が解けたのはグラスノスチペレストロイカというのが、一般的な評価だと思っていたのでこうしたプーチンさんの言葉はちょっと面白いです。単純にロシア人だけでなく、連邦下にあった諸民族ほとんど全てにおいて「レーニンソ連全ての子供たちの父であり、世界の発明の多くはロシア人のものだ」と真面目に教えられていたわけで。我々は全てまずソ連人である。
ところがそうした思考管理は上記二つの政治改革によって解けてしまった。
そっから緩やかにソ連が解体されていくのは、爆弾的展開というよりは遅行毒という方が適切かなぁと。まさに共産主義国家らしく、それぞれ固有なアイデンティティに基づく激情を心底舐めていたソ連。欧米の帝国なんかは植民地独立騒動で一足早くそれに気づいた(むしろ否応なく気付かされた例が多い)ものの、下手に思考管理が上手くいってしまったソ連は結局あそこまで延命できてしまった。
私たち日本もこれは他人事ではなくて、同じように隣国の反日運動が現代になって盛り上がっているのを見て「何故今更」と少なくない人たちが困惑しているわけで。でもまぁ歴史が教えてくれるのは、民族的な記憶――そしてそれが呼び起こす感情ってってせいぜい数十年ばかり抑圧されてきた程度じゃまったく収まったりしないんですよね。


その意味で言えば、今の中東の混乱なんかにも通じる、このお話は現代でも尚考察されるべき興味深い点があるのかと思ったりします。果たしてそれはレーニンが「言ったせいで」自治への待望論が高まって連邦が崩壊したのか、それとも別にレーニンが言おうが言うまいがそうなっていたのか。
アラブの春』は欧米諸国による間接的介入のせいなのか、それとも彼らの自発的目覚めなのか。


個人的にはやっぱりソ連時代の思想管理を通じて長期間、民族的感情や記憶が抑圧されていたからこそ、その反動で統制や緩まった際に噴出したと思っていますけども、上記ニュースを見る限りプーチンさんはそう考えていないのかなぁと。まぁ旧ソ連の体制人らしい発言といえばその通りですね。ソ連人たちが自発的に自治や自由を求めたのではなく、レーニンが昔爆弾を埋めていてそれを見事に掘り当ててしまったから「20世紀最大の地政学的悲劇」が起きたのだ、なんて。
まぁそんな民族自決の権利を認めたらソ連なんて存在できませんしね。


果たして民族自決といった価値観は、自然に生まれる感情なのか、レーニンのような理想主義的な革命家が撒き散らした害毒なのか。まさに初期のマルクス主義が唱えていたように、イデオロギーや兄弟愛は、我々が民族的差異として持つ歴史・言語・宗教・文化といった違いを乗り越えられるのか。
「ソ連人」たちと「ヨーロッパ人」たちが同じように見た華胥の夢 - maukitiの日記
以前の日記でも書いたように、現代の欧州連合ってそんなマルクス主義と同じような挑戦をしているのがこの構図のとっても愉快なお話だとは思います。そう考えると、プーチンさんと欧州連合に未来を託そうとしているメルケルさんは実は同じポジションに立ってもいるよねぇと。


みなさんはいかがお考えでしょうか?