次期大統領というよりは「党」へメッセージを送る賢い有権者たち

ポストオバマアメリカ政治の行く末。


過激極右&革命的左派が圧勝 -反エスタブリッシュ旋風渦巻く米大統領選の憂鬱
米大統領選のニューハンプシャー州予備選を終えて
そういえばニューハンプシャーでも面白い結果になったそうで。

経済格差の拡大やテロの恐怖など、米国民が抱えている不満や不安は増大する一方です。にもかかわらず、それを解決する権力と責任を担っているはずの主流派議員たちは、明確な対応を一向に示してくれない。ならばいっそのこと、政治経験のない民間人やしがらみのない非主流派議員、つまり「アウトサイダー」に票を託し一気に世の中を変革してもらおう。

というのが、現在米国に吹き荒れる「反エスタブリッシュメントの風」の正体でしょう。殊に「経済格差」を背景に噴出するこの風は今後も猛威を奮い、クリントン候補を悩まし続けると私は思います。

過激極右&革命的左派が圧勝 -反エスタブリッシュ旋風渦巻く米大統領選の憂鬱

個人的には、代表選でトランプさんやサンダースさんが支持されている、というだけでなくこうした(端から外野として見る分には)愉快な票の動きって『党』へのメッセージだと思うんですよね。極右極左候補へ投票するのは党への圧力をかける為なのだろうなぁと。
民主党にしろ共和党にしろ、党内エスタブリッシュメントへの不満票として。
――ここで重要なのは彼らが投票した候補者が「実際に」勝つことだけじゃないわけですよ。むしろそうした不満票が確実に存在することが明示的になる、という時点で目的は半ば達成されている。
その事実が明らかになると言うことは、今後の党内政治においてそうした意見を容易に無視できなくなるということでもあるから。中道化を望まない両翼の有権者たち。


既に米国政治ウォッチャーな人たちからちょくちょく言われているように尚も本選においても大本命とされているヒラリーさんが、こうした民主党内の政治的変化を今後無視できなくなるのは確実でしょう。
その意味で言えば、確かにヒラリーさんのポジションにとってはこうした流れが不利なのは間違いないんですよね。だって夫だったビル・クリントンさんの時代から、まさに二人は「中道化」の旗手としてJFK以来大統領選においてひたすら劣勢だった民主党を文字通り救ったわけですよ。
ところがあれから20年経ち、最早米国政治トレンドは真逆の方向へ転換している。
共和党だけでなく民主党も同じく、ライバル政党とさほど変わらないような政策を掲げる中道派ではなく、よりハッキリとポジションを取る政治家こそが求められている。


良くも悪くもこの旋風が米国政治の風向きを変えるのは確実でしょう。そしてそれは何もそうした候補者が勝つ必要すらない。過激な党内候補に投票する現実的理由。以前日記でも少し書きましたけど、やっぱりそれは賢い投票行動ではあるし、むしろこうした流れが一時的ではなく「本気の」投票行動だと言う事はできますよね。
党により過激化しろという圧力を掛けるために、極右や極左に投票する、賢い米国有権者たち。


がんばれアメリカ。