まさに彼ら彼女らは、臆面もなく偏見やヘイトをしているからこそ、酌量の余地があるのかもしれない

IEDを(脳内に)設置され他者を死傷させた人物に罪はあるか?


犯罪者自身のせいではなく「脳が犯罪を起こさせた」として罪状軽減を目指す行動遺伝学 - GIGAZINE
うーん、まぁ、そうね。この辺のお話は泥沼感ハンパないのでむつかしいお話ではあります。でも神経科学というか所謂『脳科学』って昨今の本邦ではすっかりアレがアレな扱いになりつつあったりしますけど。
「矯正施設には、小学生の性犯罪者が目立つ」「ほぼすべての子が再犯する。先が見えない」…性犯罪の”治療”は可能なのか(石井光太) - QUIET & COLORFUL PLACE- AT I, D.
「認知症患者JR事故」家族の賠償責任無しの判決、自分がその「被害者」になる可能性も含め”覚悟”しよう。 - QUIET & COLORFUL PLACE- AT I, D.
最近もgryphon先生の所でかなり関連した話題があって、大多数の人にとっては「今はまだ」他人事ではあるものの、それが将来にわたって同様かというと絶対にそうとは言えないわけで。避けようのない老化や病による犯罪被害は、落石や隕石など石によるものと諦めるしかないのか、まぁ色々と考えてしまうお話であります。



間欠性爆発性障害は以前に考えられていたよりも一般的です。
衝動制御障害 - 脳科学辞典
有名なところでは、唐突な暴力衝動となって表れる『間欠性爆発障害』なんかが結構あったりするわけで。こうした人たちによる犯罪をどこまで認定するか、というのは難しい問題ですよね。
最近知ったんですが、ちなみにこれって英略語「IED」で、イラク戦争辺りで一般化した奇襲性爆破攻撃である軍事上の「Improsive Explosion Device(即席爆発装置)」と略語が同じで、シュール過ぎる冗談にしか見えないお話で思わず苦笑いです。


自分とはまったく無関係なIEDで傷を負う人たち。


ともあれ、上記IEDがそうであるように、一般に(人間を含む)動物の情動を主に制御しているのが偏桃体であり、仮にそこで異常があれば犯罪行為を起こしてもまったく不思議ではないし、むしろごくごく自然の帰結ですらあります。
――しかしそうなると全く同じなんてありえない以上、一体異常の閾値はどこになるのか、という致命的な問題も生まれてしまうんですけど。
遺伝子決定論者などが言うような「全ては遺伝子の命令である」的な悲観的・冷笑的な見方はおそらく間違っているし、逆に、人間の後天的性質――所謂『文化』として私たちが成長過程で獲得する行動基準こそが行動の全てを決定するというのもまた間違っているのでしょう。
動物と決定的に人間の行動が違うのは私たちが『意味』を考えることであり、他人をやっつけてやりたいという気持ちは脳のどこか(辺縁系と新皮質)で『意味』と結びつく。
ここでめんどくさいのは脳は自らを騙して「意味ある行動」だったと錯覚させることすらある点でしょう。頭の中の、宇宙人のチップが、寄生虫が、悪魔が、そして脳の異常が、入り込んでいるせいで行動が歪められているのだ、なんて。


もしかしたらヘイトを振りまく人たちも、ただ彼らの文化的背景からそうしているのではなく、憎悪が殊更に強化されてしまう脳のビョーキかもしれない。実際、現代社会において特定の民族・人種・宗教を十把ひとからげにするようなあまりにも強い『憎悪』って客観的に見て不合理なのは間違いないでしょう。
個人的にも極論に近いとは思いますが『人はなぜ「憎む」のか?』の著者であるラッシュ・W・ドージアJr先生は、まさにそうした人たちは(日常生活に支障がでるほどの)極度の恐怖症を持つ人たち同様に、心の健康問題を抱えた人たちとして心理療法の「患者」として扱うべきかもしれないと仰っています*1
であれば偏見やヘイトを振りまく彼ら彼女らは、まさにそんな不合理な憎悪を持っているからこそ、酌量の余地がある、のか?


まぁこうした見方自体が「反ポリコレ」とか言われちゃいそうですけど。
いやぁ難しくてめんどくさいお話ですよね。


みなさんはいかがお考えでしょうか?*2

*1:P33

*2:前回日記への私信:ていうかそもそも僕のもかなり昔にどこかで見たのを「そんじゃーね!」ばりに分投げオチとして使いまくっているだけなのですが、わざわざ言及していただき光栄です(笑)