「ロシア」と「イラン」をパートナーに選んだアサド父の慧眼、あるいは名実ともに「後ろ盾」たりうる事を証明したプーチンの実力

どちらにしても米一強状態な国際関係の終わりの始まりな事例がまた一つ。



「我々は結果を残した」 プーチンの両にらみ戦略とは? プーチン大統領のシリア撤退演説を読み解く(前編) WEDGE Infinity(ウェッジ)
プーチンさんの勝利宣言について。面白い解説。

 我々はシリアの合法的な政府及び国家体制を強化するために偉大な働きを示した。これについては私が国連創設70周年に際して述べたように(「アラブの春を恐れるロシア」)、彼らの軍は強化され、今やテロリストを封じ込めるだけでなく、これらに対して有効な攻撃を行うに至っている。シリア軍は戦略的な主導権を握り、テロリスト集団から自らの国土を解放し続けている。

 重要なことは、我々が和平プロセスを開始するための条件を打ち立てたということだ。米国及びその他の諸国との間では、積極的かつ建設的な相互関係を再構築することができた。真に戦争の終結を望み、実現性のある(すなわち政治的な)紛争解決を模索する責任あるシリア国内の反体制派とも、である。そして、この平和への道を拓いたのは、ロシアの兵士諸君である。

「我々は結果を残した」 プーチンの両にらみ戦略とは? プーチン大統領のシリア撤退演説を読み解く(前編) WEDGE Infinity(ウェッジ)

プーチンさん嬉しそう。
でもまぁこの辺はかつてのソ連のような超大国への回帰(影響力の復活)を使命とするプーチンさんにとっては、本当にもう欣喜雀躍のような展開ではないかなぁと。一度は地に墜ちた東側陣営盟主への復活の狼煙。


それこそロシア(ソ連)にとってシリアと言えば、昨日今日出来た同盟国じゃないわけですよ。父のハーフェズさん時代から続くソ連時代からの戦略的同盟国=援助相手。彼らにはただシリアを支援するだけでなく、世界に対する明確なメッセージとして『後ろ盾』となるだけの価値があったのでしょう。
――我々は(誰かと違って)困っている同盟国を見捨てはしない。
この大国による『後ろ盾』について色々と対照的で面白いのは、かつてサダトさん時代にエジプトがソ連を捨ててアメリカに走った時、父アサドさんも一緒にと誘われたもののシリアはソ連側で居ることを選んだ過去があったわけで。ついでに言うとイランとの関係もイイ戦争があっても尚シリアは維持し続けた。少なくとも『アラブの春』までの展開を考えると、そんなシリアの選択はあまり良い結果をもたらしたとは言えなかったのかもしれない。
ところが『アラブの春』がすべてを変えた。
結果として見ると、シリア――というかアサド家は見事にそうした同盟関係の「配当」を現代になって受け取ることでアサド政権が存続したのは、非常に面白い国際関係の流れだと思います。
まさにそれとは正反対に、アメリカに走ったエジプトは莫大な援助を受け続けてきた(それはただ一方ではなくアメリカの中東戦略や対テロ戦争においてもエジプトは重要な現地の協力国だった)にも関わらず見事に見捨てられ、あんなオチを迎えてしまったのは、ロシアのシリアへの決定的な支援を考えるとやっぱり面白い対比ですよね。同盟関係が最終的にどのような結末をもたらすかなんて解らないものだよなぁとしみじみ思います。
どう考えても負け組にしか見えなかったロシアとイランを味方に選んだ父アサドさんの慧眼。富国という点では実際失敗したものの、独裁体制の維持という意味では、両者を味方に選んだことは結果としてみれば正解だったと言うしかない。




そしてロシアからすれば、シリアはこれまで以上にロシア逆らえなくなった。『後ろ盾』を持つことのデメリット=与える方からすればメリットってこの点に尽きるわけですよ。
だからこそ私たち日本も同様に、親アメリカというポジションから決定的な逸脱なんてできない。それはなにも同時代の政治家の気概やイデオロギー云々のお話ではなくて、ただただこの関係性から生まれる構図でしかない。
しばしば「中立」への象徴的憧憬として語られるスイス、あるいはイスラエルが『後ろ盾』を忌避するのはこうした理由があるからなんですよね。つまり、守ってもらうということは相手の提案に――まさに今のアサドさんのように自分が気に入らなくても――従わざるをえなくなるから。そして(ただ領土的野心というよりは)地域大国としての強者ロシアの復活を望むプーチンさんにとっては、まさに今回のように自らの影響力を使って相手に強制(それは確かにwinwinでもある)することで自らの力を証明する。


ウクライナや、南シナ海、そしてこの結局このシリアでも、オバマさん時代のアメリカは子ブッシュさんとは違った意味で歴史を変えてる感すごいよね。
がんばれアメリカ。