残酷な多極化世界のテーゼ

一足先にその一端を垣間見せてくれるサービス精神旺盛な中国。


仲裁判断、中国外交に大打撃 習主席「一切受け入れない」 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News
http://www.afpbb.com/articles/-/3094339
フィリピン、南シナ海裁定の「尊重」を中国に要求 写真6枚 国際ニュース:AFPBB News
ということで結果が出たものの、中国さんちは当然受け入れ拒否しているそうで。

 フィリピンの訴えを受けた裁判で仲裁裁が12日に下した判断は、天然資源も豊富な南シナ海の支配に野心を燃やす中国にとって外交的な大打撃となった。中国政府は真っ向から拒絶しており、中国外務省は同日のうちに「判断は無効で何の拘束力もない」との声明を出した。

 新華社によると、中国の在オランダ大使は「きょうはハーグにとって『ブラックチューズデー(黒い火曜日)』になった」と批判。判断は「国際法を辱めた」とこき下ろした。

 中国はこれまで一貫して仲裁裁にはこの問題を裁く権利がないと主張しており、新華社は「法を乱用した裁判所による根拠なき判断」と報じている。

仲裁判断、中国外交に大打撃 習主席「一切受け入れない」 写真10枚 国際ニュース:AFPBB News

やっぱり個人的に面白いと思うのは、中国の言い分かなぁと。これって所謂「多極化世界の論理」そのまんまなんですよね。
「当事者ではない国際社会は我々の領域内のことに口を出すべきではない」
彼らは間もなくそうした世界がやってくると(もちろんポジショントークとしても)信じ、そのように振る舞っている。確かに『多極世界での論理』として見れば、中国の言うそうしたって一切そこまで間違っているわけじゃないんですよね。


おそらく私たちが生きている間にという意味で「やがて」やってくるだろう多極化世界の可能性について。


そんな未来について、日本でも楽観的な人たちが「横暴なアメリカではなくなる」的な事をいう人は少なくなかったわけですけども、まぁもちろん平和な多極化世界がやってくる可能性だってあるわけですよ。
――例えば超大国の影響力がなくなっても、国際関係上の揉め事を条約や国際法に則って解決することができるなら。
もし、そうならなければ……多極化世界はきわめて残酷な世界を生むことになる。そこでやってくるのは、複数地域でそれぞれに政治的経済的大国=極がそれぞれに「地域の警察官」「地域の裁判官」となる世界であります。それ以外の弱国は従うか、あるいはどこかの援助を受けて反抗するしかない。
何が正義で何がそうではないか――まさに冷戦後あったアメリカのように――該当地域の強国がそれぞれに決める。その意味で言えば、例えばヨーロッパや北米辺りでは概ね今と変わらない世界が維持されることになるでしょう。その支配者が変わらない以上、彼らには世界が多極化しようがそこまで致命的な影響はないから。
しかしそれ以外の地域では、該当地域の最強国が何が黒で何が白かを決めるようになる。そこで他の地域から何を言われようが、気にする必要はない。だってまさにそれこそが多極化世界のテーゼなのだから。それは同時に「欧米リベラルな価値観の敗北」でもあるんですが、まぁでも自分たち(地域)では守れるから他所=中東やアジアやアフリカがどうなろうが知ったことではないよね。その意味で言えば、中国やロシアだけでなく、最近の動きを見る限りアメリカやヨーロッパも多極化世界に適応しつつあるとも言えたりする。
果たして極東アジアはその領域内にあるのか否か。


多極化世界ってつまるところ、それ以外の地域に干渉しない世界でもある以上、例えば別の地域である独裁国家が暴れてもその『極』内で解決する問題だと無視することになるし、あるいは国家が破綻し大多数が難民となってもそれはその『極』内で解決する問題となる。
そして中国はまさにその通りに「南シナ海の問題は、当事者である我々が自分たちで解決する問題であって、部外者が口を出すべき問題ではない」と言ってみせた。


南シナ海は、一足先に残酷な多極世界を体現しようとしている、のか?
みなさんはいかがお考えでしょうか?