ふたたび第三世界では軍事政権の時代に?

「それでも戦争よりはずっとマシだ。内戦で国がなくなってしまうよりマシだ。だいぶだいぶマシだ」



トランプ「第3次世界大戦」発言の深層にあるもの | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
冷泉先生の面白いお話。

 クリントンのやったコソボソマリアへの介入、ブッシュのやったアフガニスタンイラクでの戦争、オバマのやった「アラブの春」支持とその後の優柔不断......トランプの論法は、メチャクチャではありますが、その24年間の全ての「介入政策」について、それこそ「ちゃぶ台返し」しているわけです。

トランプ「第3次世界大戦」発言の深層にあるもの | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

アメリカの「介入疲れ」ですって。
といってもトランプさんオリジナルではなくうちの日記でもずっと書いてきたお話ではあるし、それこそ『9・11』の数年後には既に先見の明のある賢い人たちから言われてきたお話ではありますよね。あんな風に無茶に戦争し必ずその揺り戻しで「戦争拒否→引きこもり」パターンがやってくるだろう、なんて。
そのようにしてイラクでも、米軍兵士死体が引きずられた様子を放映されたソマリアでも、「狂気の」ベトナムでも、泥沼の第一次大戦でも、独立以来続くアメリカ伝統の孤立政策=自分たちさえ平和であればいいのだ理論について。


まぁこの点については戦後日本もまったく同意見を持っているので頷く人は多いんじゃないでしょうか。別に海の向こうで何十万が死んでも、何百万人が難民になっても知ったこっちゃないわ、というのは現在の日本の国民世論にこれ以上ないほど合致している。
――でもアメリカが本気でそんな風だと、日本の周りまで燃えちゃうので勘弁な。
ということで番犬様あとはよしなに。




ともあれ、そうして前任者の政策を否定してみせるのはいいものの、少なくとも実際の政治権力を握ろうとする政治家であるならば『代替案』が必要となるわけですよね。そこでトランプさんが言うのは「丸投げ」であると。

 ところが、トランプには一応答えはあるのです。「モスル奪還は無意味だが、ISISに対してはアサド政権とロシアが戦っているのだから、それを支援するのがいい」というのです。確かに話の辻褄は合いますが、こうなると中東問題については完全にロシアに丸投げという外交政策になります。

トランプ「第3次世界大戦」発言の深層にあるもの | 冷泉彰彦 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

丸投げ先を「ロシア」と限定するとアレですけども、自分たちは手を引き間接的支援に任せるって古典的解決方法ではありますよね。
実際、第二次大戦後の冷戦初期の時代にもアメリカは自身の勢力下の中でも『僻地』『外縁地』な所で頻発していた反アメリカ暴動に対して、他の問題に集中(当時は対ソ連に集中)する為に同じようなことをやって、まぁそれなりに成功してきたわけですよ。
南アメリカでも、アフリカでも、東南アジア(ちなみにこっから今話題のフィリピンの反米ドゥルテさん登場まで地続きであり歴史って面白いよねでもそれって今回の話とはズレるので割愛)でも、もういちいち自分で鎮圧するのめんどくさいから現地の軍事政権にまかせちゃおう! アメリカが軍事政権に支援すれば冷戦体制の味方も出来て一石二鳥!
第三世界の軍人階級は進歩の旗振り役であり、20世紀にふさわしい国家体制を築いてくれる」
悪名高きアメリカの謀略=軍事クーデター支援(黙認)って、基本的にはこうした理由から起きていたわけですよね。まぁ結局はそうした軍事政権はいつまで経っても(欧米の政治的リベラル的な民主主義という意味で)『進歩』してくれず、ついでにそもそも冷戦も終わって安全保障としても支援する意味も薄れ、やがて国民世論という圧力も加わってそうした外部委託は廃れていくのでした。そして直接介入の時代へ。


翻って21世紀のアメリカは、当時とはまた違う主目的でありながら、しかし基本的には同じような『委託』ポジションに立ち返りつつあるのだと個人的には思っています。
自分たちは他の仕事で忙しいから、後は適当にやってくれ。
自分たちに迷惑をかけないのならば、別に軍事政権でもいいじゃない。
まぁ確かにそれって一つの解答ではあるよね。時代が逆回転している感じもあるけど。問題はそうした外国支援について、国民世論が納得するかどうかだけれども、ぶっちゃけその辺は(反過激イスラム感情が多分に混じった)『対テロ』という大義名分でどうにかなる気がしなくもない。
「民主主義の為ならば国は死んでもいい」なネオコン的な人たちはもうすでに結構居なくなりつつあるのだし。



再び「(親米であれば)軍事クーデター歓迎!」な時代はやってくるか?


みなさんはいかがお考えでしょうか?