21世紀の国際機関のみらい

拒否権か分裂か連絡会か。


トランプ米政権、主権侵害するWTO決定従わず=USTR報告書| ロイター
中国「WTOを尊重」=トランプ政権をけん制:時事ドットコム
WTO加盟の時から、いつか中国辺りが言うだろうと思っていたらアメリカで、それを非難するのもアメリカではなく中国だったっていうオチ。面白い構図ではありますけども、しかし利益を得ている構図を考えると特に不思議でもないのかなぁと。欧州連合が既にそうしているように、TPPもこうした不満を回避(巧妙な障壁化)する為でもあったはずが、まぁそれも蹴っちゃったから正面突破するしかなくなってる感。



ただまぁトランプさんのこうしたぶっちゃけトークというのは、現代世界における国際機関から主権国家への干渉の正当性について、古くて新しい問題でもあるんですよね。最近での構図では「欧州連合(ユーロ)からの勧告」と「ギリシャ国内の選挙結果」の微妙な齟齬なんかがあったりしたように。
「もし仮に、国内の(民主的な)決定と国際機関の勧告が相容れないモノになったらどうするのか?」
――『わが代表堂々と退場す』な記憶がまだ残る私たちとしてもやっぱり頭の痛い問題ではありますよね。現在においてもそうした声は少なくなくて、TPPあるいはテロ準備罪なんかの議論でも「世界がそう言っても、国内にダメージがあるのは否定できないのだからそのルールには反対だ」という反対の声はかなり大きいわけだし。トランプさんもそうした声を正しく拾い上げていっているだけ、という見方は確かに真実の一つでもある。
こうした問題を考えると現代の国際機関ってどうやって意見を集約させるかというと最終的には、大国の一方的優越を認める『拒否権』か、あるいはなんら実効性を持てないただの『連絡会』になるしかなくなってしまうんですよねぇ。それってつまり今の国連のことなんですけど。


ちなみにWTOの紛争処理手続きには一応そうした事態=国内法を優先する権利は加盟国に認められていて、ただ調停勧告を拒否する代わりの補償の義務があったりするんですよね。といっても上記によるそんな対抗策の効果が弱まるのは間違いないので、それも拒否しちゃいそうですけど。

ピーターソン国際経済研究所のシニアフェロー、チャド・ボウン氏は「歴代の大統領とは異なり、トランプ氏は中国などに対して輸入制限を導入することに積極的だ。だがWTOの規定を踏まえれば正当性はかなり疑わしい」と指摘。「米国がこうした方針を取ることの最大の問題は、他国も直ちに同様の措置を講じることだ」と述べた。

トランプ米政権、主権侵害するWTO決定従わず=USTR報告書| ロイター

まさに1930年代のそんな報復合戦を防ぐために、そもそもの存在意義として生まれたWTO。果たして今度こそそんな「いつか来た道」である悪循環を止められるのか? 今こそ人類の叡智が試される時代っていう感じでwktkしますよね。


一部の人たちが予想していたように、アメリカ一極世界が終わり、多極化な世界がやってくることで国際機関の存在がよりクローズアップされるようになりつつある。でもそれって決して楽観できるような事態ではなく、各ポジションが入り乱れることによる意見集約の「更なる困難化」でもあるんですよね。むしろより弱体化し無力化が進む可能性は低くない。
ロシアと中国、化学兵器使用めぐるシリア制裁に拒否権行使 - BBCニュース
実際に、未だ私たち人類はその意見の違いを乗り越える方法を見つけられてはいないのだから。


がんばれ人間。