もうひとりの欧州平和王

NATOが時代遅れにならないことの悲劇。




トランプ米大統領、NATOは「もはや時代遅れではない」 - BBCニュース
トランプ大統領NATOへの評価を転換「もはや時代遅れではない」 | ワールド | 最新記事 | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
トランプさんの前言撤回シリーズの一つである「NATO時代遅れ」について。

ドナルド・トランプ米大統領は12日、北大西洋条約機構NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長とホワイトハウスで会談し、会談後の記者会見でNATOはもはや「時代遅れではない」と述べた。大統領選中からNATO不要論を繰り返すトランプ氏の姿勢に、NATO加盟国は危機感を示していた。

トランプ米大統領、NATOは「もはや時代遅れではない」 - BBCニュース

実際、昨今のヨーロッパでの騒動を見ると、むしろ今だからこそNATOの必要性は増していますよねぇ。もちろんそれはクリミアを筆頭にしてヨーロッパへのロシア取り込みの失敗(かつて楽観論に溢れた時代には「ゆくゆくはロシアもEUに」なんて言われていたりすらした)の帰結でもあるし、更に言えばドイツ一強時代が見えつつあることの帰結でもある。
その意味で言えば、トランプさんの転換は、アメリカがヨーロッパから更に手を引くという文脈においてやっぱNATOは時代遅れじゃなくなりつつあるわ、というのは悲しいかな正論でもあるのでしょう。


NATOが担保してきた上記東側陣営への対抗という外向きの存在意義だけでなく、内向きの存在意義としてあったヨーロッパ内の平和維持。
30年戦争後の強大なドイツ登場によって、ヨーロッパの勢力均衡は終焉した。
それを復活させようとして結局は失敗したのがヴェルサイユ条約であったし、皮肉にも冷戦によってドイツ分割が実現し勢力均衡が再び生まれたのが第二次大戦後ヨーロッパ世界でありました。冷戦が終わりドイツ再統一が成ってもヨーロッパがそんな時代に逆戻りしなかったのは欧州連合と、そして域内軍事同盟であるNATOのおかげだったんですよね。


ドイツ一強というヨーロッパを緩和させるための、さえたやりかた。ヨーロッパはそれを欧州連合NATOによって実現した。今でも古き良き勢力均衡の世界に生きていて、それが崩れることで緊張が高まるというありがちパターンに今まさに陥っている私たち東アジアの民からするとうらやましいお話ではありますよね。
――まぁその片翼であったはずの『欧州連合』は、バランサーとしてあったイギリスも抜け、ご覧の有様でもあるんですけども。果たしてNATOEUとは同じ運命を辿らずにドイツの拘束具としての役割を果たし続けることができるのか。やっぱり時代遅れではなく、むしろ今こそ本当の(対露ではないもうひとつの)闘いの始まりかもしれない。
NATOは時代遅れではなくなった」
つまりトランプさんの言う「公平な分担」にもっとも余力のある国と言えば……。



がんばれNATO