経済制裁の正しい使いかた

多極化世界の日常のはじまり?



サウジやエジプトなど4か国、カタールと断交 「テロから守る」 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
UAE、カタールとの国交回復に「確約された計画表」を要求 写真2枚 国際ニュース:AFPBB News
カタールさん近辺が大騒動だそうで。もちろん、シリアやイエメンの騒乱にイラン核問題の一応の解決等々によって徐々に圧力が高まりつつあることは知っていましたけども、こういう形で表面化することになるとはまったく思わなかったなぁと。味方か敵か、旗幟を鮮明にさせることの帰結が経済制裁だった。日本韓国台湾と似た経験があるように中国さんなんかが好きな手法ではありますけども、それをこうあからさまに真似する国が出てきちゃったのは色々と今の時代を考えさせられるお話じゃないかと。




ともあれ、そんな中で面白かったのが制裁による影響を現地カタールから綴ったブログであります。
http://tenfa.wnp.jp/1520/
http://tenfa.wnp.jp/1532/
http://tenfa.wnp.jp/1545/
http://tenfa.wnp.jp/1553/
いや、面白がっちゃ不謹慎ですけども、それでも現代における経済制裁の影響が目に見える形で解りやすく出ているのは興味深いなぁと。

考えてみると普段から買ってた食品(鶏肉、牛乳、乳加工品、ジュース、菓子、等々)は殆どがMade in KSA(Kingdom of Saudi Arabia)で、普段買ってたお米はMade in Egyptという訳で、完全に詰んでます。まさか2017年にもなって食料品の兵糧攻を食らうと思っていませんでした。ただでさえ、普段から家畜の餌レベルの飯を食ってたわけですが、こうなると何食わされるのかわからない状況。食料品を他国に完全に依存してるので上手くしてやられた感じです。食料品自給率が低い国の殺し方としては初日から上手く行っていて別の意味で色々と感心しました。サウジアラビア強い。

http://tenfa.wnp.jp/1520/

途端に消えていく生鮮食品たち。色々と勉強になるというか、私たち日本からするとむしろ震災直後の記憶が蘇る感じでしょうか。もちろん上記ブログでも言及されているように、禁輸されたのであれば別から輸入すればいいわけですよ。
ただ、そうなってもカタールにダメージがあるのは確実ですよね。そもそも彼らは埋蔵資源だけに頼らない中東一帯の中心たらんとする金融センターを目指していて、その為には無論他国からのコミットがヒトもカネもモノも欠かせない。逆に北朝鮮のような孤立国家では、そもそも他国からの依存度が低いために制裁による被害は相対的に小さくなる。更には上記ブログ主さんが困っているように、経済制裁の痛手をより強く受けるのは保身が可能なリソースを持つ権力者たちではなく、むしろ一般の民衆たちでもある。それこそ経済制裁によってイラクでは食料及び医療物資不足から数十万人が死んだといわれているほどであります。ちなみにそれでもフセイン政権は倒れなかった。


皮肉なお話ではありますが、つまり『経済制裁』とは権力者より民衆を痛めつけるモノであり、更には孤立国家よりも他国と協力しながら発展を目指す平和国家(民主主義国家であれば尚いい)であればあるほど有効となる。


まぁその意味では、やはり「普通の国家」であればあるほど有効なんですよね。イラク北朝鮮のような国家にはあまり効果――本来の目的である体制転換――をあげなかった経済制裁ではありますが、こうして地域覇権をめぐる争いではかなり有効な道具となりうる。
最早それを咎め超大国も存在しないし、アメリカにしろヨーロッパにしろそれどころか積極的にその『貿易』を外交の武器にしようとしているほどであります。きっとこうした風景は今後更に増えていくのだろうなぁ。その効果的な第一撃が経済制裁である。


(それぞれの地域の中で覇権争いがはじまる)すばらしき多極化世界へようこそ!