民主主義的公正世界信念の隙をつく人たち

「公正な政治を実現するための公正な報道」を実現するための公正な監視役としての何か、を監視するための何かを監視するための……。




CNN記者3人辞職 トランプ氏側近について記事撤回で - BBCニュース
扇動的なのはどっちだ――ホワイトハウス記者室で激しいやり取り - BBCニュース
うーん、まぁ、そうね。少なくともトランプ政権側に有利に働く燃料が投下されたのは間違いないよねぇと。日本でも徐々にその顕著は見られるようになってきましたけど、元々アメリカではそれと比較にならないほどマスコミへの評価――保守かリベラルかで――の二極化はより著しいわけで。
フェイクニュースだのオルタナティブファクトなどと、左右からお互いに『信頼できないメディア』というレッテル貼り付け合う人たち。

トランプ大統領は27日朝、ツイッターで「わあ、CNNが『ロシア』について重大記事を撤回する羽目に。従業員3人は辞職に追い込まれた。連中のほかの嘘っぱちの記事はどうなんだ? 偽ニュース!」と書いた。
その後も、「偽ニュースのCNNは嘘をついて出したうそっぱちのロシア記事を撤回する羽目になって、経営陣を大変更することに。視聴率は急落だ」とツイート。また、NBCCBS、ABCの三大ネットワークや米紙ニューヨーク・タイムズワシントン・ポストも名指しし、「ぜんぶ偽ニュースだ!」と書いた。
CNNの視聴率に関する大統領のツイートには、同社広報アカウントが「CNNは第2四半期として過去最高の視聴者数を記録したばかり。これが事実です」と返信している。

CNN記者3人辞職 トランプ氏側近について記事撤回で - BBCニュース

やはりCNNの報道は間違っており、つまり「トランプ政権への非難は不当だったのだ!」なんて。
面白いのは、トランプさんへの反論として報道側も「いやむしろ(トランプ報道によって)視聴者はうなぎ登りだ」とぶっちゃけていますけども、端から見るとそれってかなり墓穴掘ってる感あるところですよね。つまり、彼らはあまりに視聴者に「ウケる」トランプ報道であるからこそデマに飛びついてしまっている、可能性がある。
いやまぁ本邦でもちょくちょくあるようによくある光景といえばこれ以上ないほどよくある光景でもありますけど。それでも、こうしてきちんと解雇までしている辺り、彼らの誠実さあるいは危機感がよくわかるお話でもあります。それに比べて本邦は以下略。




ともあれ、この辺が殊更に大騒ぎになっているのは、結果よりもプロセスが重視されるアメリカ社会らしい風景なのかなぁと少し思ったりします。もちろん本質的に報道側が間違えようがトランプさんたちの失態が相殺されるわけでは絶対ないわけですよ。しかし、まさに彼らが自称している権力監視プロセスに不備があるとすれば、その出力される言葉にも不備がある可能性が生まれてしまうことになる。
ただ「反トランプである故に報道」という単純な図式よりは、むしろアメリカ社会に根強くある「プロセスの公正さ」という信念をトランプ政権は上手く利用している構図なのかなぁと個人的には思ったりします。
報道に過誤があったならば彼らの今後の政権批判が幾らかのエクスキューズが付いてしまうのは避けられない。でもそれを言いだしたら永遠に「監視役の監視役」が必要になってしまう。上記のような端から見ている分には愉快な争いは、今後も加速していくのでしょうね。プロセスの公正さが重視される社会だからこそ。
弁論における二大戦略の一つでもある、反論が難しいならば相手の発言の正当性を傷つければいい、そのままに。


がんばれアメリカ。