現代ヨーロッパの時代性の発露

移民受け入れとソフトターゲットテロの果て。


欧州人権裁、顔全体を覆うベールの着用禁止を支持 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News
へーおもしろい。もちろんこれって「古くて新しい議論」でもあって、15年位前フランスの「スカーフ禁止in学校の是非」の騒動なんか有名でしょう。でもあの頃はまだそんなフランスをヨーロッパ諸国は遠巻きに眺めているだけだったのに。ところが今ではベルギー他が後に続いているだけでなく、EUからもお墨付きというご覧の有様。時代がフランスに追いついちゃったなぁという感じ。

 同裁判所は声明で、同法が社会の統合を目指すものであるとの見解を示し、この法律が「他者の権利と自由を保障するもの」で、「民主主義社会において必要なもの」だとした。

欧州人権裁、顔全体を覆うベールの着用禁止を支持 写真1枚 国際ニュース:AFPBB News

社会的統合を目指すにあたって(過剰に身体を覆う)ブルカは不適切であると。かなり思い切っちゃった感。
しかしソフトターゲットテロがかなり「一般的」になってしまったヨーロッパ世界において、明らかなイスラムの格好で加えて「服の下に何を隠しているのかわからない」という人が人混みに居ることへの恐怖感に勝てなかった、というのは全く理解できないというわけでもないでしょう。
今後ちょっとアレな人たちからそうした格好が責められる可能性は低くないと思うし、かといって禁止してしまうのは事前の人権制限というのも一理ある。どちらにしてもベルギーのこれも2011年が発端ではあるものの、むしろ時代の流れ的に言うと規制強化の方向に向かうのは間違いないのでしょう。



もう一つこのお話で面白いのは、上記前例としてあるフランスが踏み切った理由にも同じく「社会統合」が挙げられていた点かなぁと。
この『統合』問題がクリティカルなのは、何も国家主義ナショナリズムから要請されているだけではなく「欧州統合」という大目標が絡んでいる点ですよね。紆余曲折の果てにとうとうイギリスが離脱してしまったように、ただでさえその統合の歩みは黄信号が灯っているのが現状でもあるわけで。ギリシャなどの経済問題から移民難民受け入れ問題まで、欧州連合に走った断層線は尚も燻り続けている。
特にその右方向へのモーメントとなるような人たちは同時にまた欧州連合への懐疑派と重なる部分も少なくないわけで。もちろん彼らを差別主義者と罵り溜飲を下げることはできるかもしれない。しかし悲しいかなそんな差別主義者も有権者である*1以上、上記ニカブ禁止令のような主張もある程度までは聞かないわけにはいかない。。


現代ヨーロッパにおけるテロ対策と社会統合推進を求める気持ち。そうした思いが逆説的に意味しているのは、その欠如の現実でもある。まぁ欧州世界の闇というか課題というか、時代性がよく見えるニュースじゃないかと思います。
がんばれヨーロッパ。

*1:戸籍を公開する蓮舫氏に期待したいこと - 弁護士三浦義隆のブログまったく本日記とは関係ありませんけど、この言葉はものすごい名言だと思います。