私は農業従事者ではなかったから

現代グローバル経済世界が抱える問題の典型事例のひとつ。



なぜトマトより米は安く売られているのか 農業から見える経済のフシギ | JBpress(日本ビジネスプレス)
へー面白い、と思ってたんですけども特にオチがなかった。
このグローバルな現代世界において国内農業を考える上で致命的に重要なのが「貿易」ではあるので、そこが抜けているのはなんだかなぁとは思うところではあります。アダムスミス先生を出すまでもなく、そもそも輸入コストが安い米と違って、生鮮食品のトマトを鮮度を維持したまま大量輸送するのって大変だしね(徐々に進歩しつつはあるらしい*1)。
――が、そこに言及しだすと今度は、既に格好の議論ネタとしてある食料自給率や保護課税の是非などに論点が移ってしまいそうなので、バッサリカットしたのは英断かもしれない。

・基礎食糧を生産する農家は儲からない経済的宿命を背負っているので、何らかの手だてが必要。

なぜトマトより米は安く売られているのか 農業から見える経済のフシギ | JBpress(日本ビジネスプレス)

で、この「手だて」にすると言及されているような――そして国内的にも嫌われる――補助金であり事実上の障壁になってしまうんですよねぇ。人件費(ついでに大量生産できる土地も)がより安い国に競争で勝てるはずもなく。そもそも儲からないなら他の業種同様できるものは輸入で賄ってしまえばいいのではないか? それとも関税や補助金をぶっこみまくればいいのか?
かくしてこの話題は今流行りの「自由貿易」の功罪の議論へ移ることまったなし。TPPやEPAでもその是非は盛り上がってますよね。


でもまぁこの辺はラウル・プレビッシュ先生の報告等、古典的でありながらも経済学的にも面白いネタでもあります。今でも言われ続けている後進国一次産品の輸出拡大において最大の障壁となっているのはまさにそんな上記リンク先で言うところの私たち先進国の「手だて」が原因であるし、かといって「手だて」をしないことには遅かれ早かれ彼らは農業で食っていけなくなるのは間違いない。
だって外国と勝負にならないのだから。規格化と通信および輸送革命によって、物理的には同じだったはずの世界間の距離は縮まってしまった。ふしぎなせかい。すてきなせかい。


でもそれは私たちただの労働者も直面する問題でもあるんですよねぇ。こっちでも遅いか早いかの問題でしかない。もしこのまま農業分野の人たちが救われないとすると……? まるでニーメラーの世界。


がんばれ日本の農業従事者たち。