冷戦時代に証明された『代理戦争』という叡智

どちらの意味での「終わりの始まり」となるか?




イラン・サウジ、関係が急速に悪化 レバノン、イエメン…中東巻き込む新たな紛争懸念も(1/2ページ) - 産経ニュース
サウジ・イラン対立が波及=レバノンやイエメン混乱深刻化:時事ドットコム
サウジさんとイランさんとの抗争の影響が、水面下だけでなく表面化というレベルで進んでいるそうで。

 両国の新たな対立の舞台と指摘されるのが、レバノンとイエメンだ。レバノンのハリリ首相は4日、サウジで突然、辞意を表明し、異例の事態だとして欧米メディアも大きく報じた。ハリリ氏はレバノンシーア派民兵組織ヒズボラが、シリアなど中東地域に兵器を送っているとして名指しで非難。自らが暗殺される危険もあると述べた。

イラン・サウジ、関係が急速に悪化 レバノン、イエメン…中東巻き込む新たな紛争懸念も(1/2ページ) - 産経ニュース

 一方、ハリリ氏の辞意表明直後の4日には、サウジの首都リヤドにイエメンから弾道ミサイルが発射され、サウジ軍が迎撃する事件が起きた。

 ミサイルを発射したのは、イランが後ろ盾とされ、サウジが空爆などで攻撃してきたイエメンのシーア派武装勢力「フーシ派」だ。サウジは背後にイランがいるとして「戦争行為だ」と非難、「敵対行動に応酬する権利がある」と強調した。

イラン・サウジ、関係が急速に悪化 レバノン、イエメン…中東巻き込む新たな紛争懸念も(1/2ページ) - 産経ニュース

レバノンにイエメンと、ザ・代理戦争という感じですよね。
――といってもこれが想定外の展開かというと、まったくそんなことはなくて、オバマさん時代から続くアメリカ影響力の後退と、シリア内戦(ついでにイラクも)での構図を見ていればまぁ素人でも予想できる鉄板の帰結ではあります。中東世界に戦後あり続けたアメリカという箍が外れた結果始まった、地域の覇権争い。


ともあれ、もちろん代理戦争の舞台となってしまった地域や国はひたすら災難でしかないお話ではありますが、それでも両国が全面戦争するよりずっとマシだし、代理戦争って所謂「主戦派」と「和平派」どちらの要請もある程度は満足させられる冴えたやり方でもあります。だから逆説的に代理戦争が続くことは「お互いに一線を越えないようにしよう」という言葉によらない『対話』の継続でもあったりするんですよね。
対話が失敗に終わり不幸な結果に終わってしまう可能性もあるんですが、一方でこのまま代理戦争だけがダラダラと続くことは、それは事実上両国間に「戦争のルール」が生まれることに繋がっていく。
そんな対話の歴史上の実例が、まさにあの米ソの冷戦時代でもあったわけですよ。

  • 武器供与はセーフ
  • 代理戦争はセーフ
  • 核兵器使用(脅迫)はアウト
  • ヨーロッパでの現状変更はアウト

長期間続いた米ソの冷戦は、その過程の中で両者が『越えてはいけない一線』の確認を繰り返し、それをどちらも(もちろんそれぞれの国内的には紆余曲折あったりしたんですが)最低限守っていくことで、やがて収束していった。冷戦が熱戦とならずに済んだのは、そうして合意していたルールの下で、お互いが代理戦争程度で満足していたからでもある。ここで面白いのは、何も国連(笑)や何らかの仲裁機関によってそうした合意を生み出したのではなく、霧の先が見えないまま試行と錯誤の繰り返しでそれを両国で生み出したことでしょう。


はたしてイランとサウジはこうした代理戦争で満足できるのか?
そしていつかのように、覇権争いのルールが生まれていくことになるのか?
――そしてこの場合、米ソの時とは違って、より軍事的に強大な上位者が存在していることが幸となるか不幸となるか?


このサウジとイランの代理戦争は、どちらの意味での「終わりの始まり」となるのか。
みなさんはいかがお考えでしょうか?